犬の膀胱炎|血尿・頻尿の検査と治療、繰り返すときの注意点

「何度もトイレへ行くのに、少しずつしか出ない」「尿に血が混じった」「排尿の姿勢を長くとる」。こうした変化は、犬の膀胱炎でみられるサインです。ただし、同じ症状は尿路結石や尿道の閉塞などでも起こります。見た目だけで膀胱炎と決めず、まず尿が出ているかを確認することが大切です。

この記事では、膀胱炎が疑われる症状、検査の違い、抗菌薬による治療、繰り返す場合の確認事項を解説します。

犬の膀胱炎でみられる症状

膀胱炎は、尿をためる膀胱に炎症が起きている状態です。細菌感染によるものを「細菌性膀胱炎(bacterial cystitis)」と呼びます。少量ずつ何度も排尿する頻尿、血尿、排尿時の痛みやいきみ、いつもと違う場所での排尿、陰部をしきりになめる様子などがみられます。[1]

尿のにおいや色の変化だけで、感染の有無を判断することはできません。また、トイレの回数が増えても、1回の量も増えている場合は多尿を考えます。飲水量が増えたか、尿の勢いはあるかも診察の手掛かりになります。

関連:犬の頻尿の原因と受診目安/犬が水をよく飲むときの確認事項

原因は細菌だけとは限りません

細菌性膀胱炎

尿道から入った細菌が膀胱内で増殖して炎症を起こします。雌犬で多くみられますが、雄犬でも起こります。糖尿病やクッシング症候群、尿失禁、尿路の構造・機能の問題などが感染しやすさに関係することがあります。[1]

似た症状を起こす病気

膀胱や尿道の結石、膀胱の腫瘍、雄犬の前立腺の病気などでも、血尿や排尿の異常が起こります。結石と細菌感染が同時に存在することもあります。猫の膀胱炎の説明をそのまま犬に当てはめ、「ストレスが原因」と判断することは避けましょう。症状が続く場合は、感染の有無に加えて尿路全体を調べます。[1–3]

受診のタイミング

尿の出方と全身状態で判断します
すぐに受診先へ連絡

いきんでも出ない、数滴だけで苦しそう、嘔吐やぐったりした様子がある。尿道閉塞などの緊急疾患を確認します。

当日中を目安に相談

尿は出ているが、血尿、排尿時の痛み、少量ずつの頻尿がある。元気があっても受診の相談をしてください。

治療中でも再相談

症状が改善しない、いったん良くなって再び悪化する、薬の後に体調を崩す。処方元に経過を伝え、再検査や治療の見直しを相談します。

これは家庭での診断表ではありません。判断に迷う場合も、電話で症状をお伝えください。

尿検査と尿培養は何が違う?

診察では、症状の始まり、過去の膀胱炎、服薬、持病、飲水量などを確認します。尿検査では尿の濃さ、血液成分、尿糖、結晶などを調べ、顕微鏡で細胞や細菌の有無を確認します。ただし、尿沈渣の所見だけで感染を確定できない場合があります。[4]

検査にはそれぞれ異なる役割があります
検査主に確認すること単独では判断できないこと
尿検査尿の濃さ、赤血球・白血球、細菌、結晶など原因菌の確定や、どの抗菌薬が適するか
尿培養・薬剤感受性検査細菌が増えるか、菌の種類、薬への反応陽性だけで治療が必要とは限らない
超音波・レントゲン検査結石、膀胱壁や周囲の異常など画像だけで細菌感染は確定できない

症状、採尿方法、各検査の結果を組み合わせて評価します。[1,3,4]

尿培養は、尿の中に生きた細菌がいるかを調べる検査です。薬剤感受性検査では、その細菌に対する抗菌薬の効きやすさを調べます。特に再発を繰り返す場合、薬を使っても改善しない場合、過去に抗菌薬を使用している場合には重要な情報になります。[2,4]

培養用には、腹部から細い針で膀胱内の尿を採る「膀胱穿刺」で、外側からの細菌の混入を減らす方法がよく使われます。適否は膀胱の状態などから判断します。自然に排尿した尿を持参できる場合もありますが、検査目的によっては院内で採り直すことがあります。[1,4]

可能であれば抗菌薬の開始前に培養用の尿を採ります。すでに投薬していると細菌が検出されにくくなる場合があるため、薬の名前と最後に飲ませた時刻をお知らせください。自己判断で薬を中断してから受診する必要はありません。[2]

治療は原因に合わせて選びます

抗菌薬の利点と注意点

細菌性膀胱炎では、原因菌に適した抗菌薬によって感染を治療します。必要に応じて痛みを和らげる薬も使います。抗菌薬には下痢や嘔吐などの副作用があり、不必要な使用は薬が効きにくい耐性菌の問題にもつながります。以前の残り薬、人用の薬、別の動物の薬は使わないでください。[1,2]

投薬期間は、感染部位、再発歴、検査結果、反応などで決めます。ISCAIDの2019年ガイドラインでは、散発性の細菌性膀胱炎に3〜5日間の抗菌薬治療を推奨していますが、腎盂腎炎や前立腺炎などにそのまま当てはめることはできません。症状が消えたからと途中でやめたり、長い方が安心と延長したりせず、指示された計画に従ってください。[2]

結石や持病への治療

結石がある場合は、種類や位置、大きさ、尿の通り道への影響を確認します。食事などで溶解を目指せる結石もあれば、除去が必要なものもあります。手術には麻酔や出血、感染などのリスクがある一方、尿道閉塞を放置する危険は大きく、状態に応じた判断が必要です。[3]

感染しやすい背景がある場合は、その管理も行います。薬だけを繰り返すのではなく、尿が十分に排出されているか、結石や構造の異常がないか、持病の状態はどうかを調べます。[1,4]

繰り返す場合は、何を調べる?

「治ったと思ったらまた血尿が出た」という場合、以前の感染が残っていたのか、新たに感染したのか、感染以外の病気なのかを検討します。前回と今回の培養結果や症状の経過は、その判断に役立ちます。過去の検査結果や処方内容があれば、ご持参ください。[2,4]

一方、症状がない犬で培養から細菌が検出される「無症候性細菌尿」は、必ず抗菌薬で治療するとは限りません。尿路の処置を予定しているなど、個別の事情によって対応が異なります。「細菌がいる」という結果だけでなく、本人の症状と治療の必要性を一緒に判断します。[2]

研究データから分かること

雌犬38頭を対象とした2014年の比較試験では、異なる抗菌薬を3日間または10日間投与し、症状と尿培養の両方を追跡しています。治療群間の治癒率に統計学的な差は検出されませんでしたが、これは「どの薬でも3日で十分」と証明した結果ではありません。[5]

薬の種類が異なり、対象も限られるため、この数値を一般的な治癒率としては示していません。治療日数だけに注目せず、症状が改善しているか、再発していないかを確認し、必要に応じて検査を見直すことが大切です。

ご自宅でできること

  • 新鮮な水を自由に飲める状態にし、粗相を減らす目的で水を制限しない。
  • 無理なく排尿できる機会を確保し、汚れたトイレシーツは交換する。
  • 尿の色、量、勢い、いきむ時間、食欲や元気の変化を記録する。
  • 採尿を指示された場合は、容器、保管方法、持参までの時間を事前に確認する。
  • おなかを押して尿を出そうとしない。症状が強い場合は採尿を優先せず受診する。

水分や生活環境の管理は治療を支える方法です。水を飲ませることや保温だけで細菌感染が治るとは考えず、診断に合わせた治療を受けてください。尿路用フードやサプリメントも一律には必要ありません。

よくあるご質問

血尿がなくなれば治っていますか?

見た目が改善しても、それだけでは判断できません。予定された投薬と再診の指示に従ってください。順調に改善した散発性膀胱炎で、治療後の培養を必ず行うわけではありませんが、症状が残る・繰り返す場合は再評価が必要です。[2]

尿を持っていけなくても受診できますか?

受診できます。必要に応じて院内で採尿方法を検討します。特に尿が出ない場合は、ご自宅で採れるまで待たないでください。

膀胱炎は自然に治ることがありますか?

家庭では原因を区別できないため、自然に治ると期待して様子を見続けることはおすすめできません。痛みや頻尿、血尿があれば相談し、尿道閉塞などを見逃さないことが重要です。

国分寺・小平・小金井周辺で、愛犬の排尿の変化や膀胱炎の再発が気になる飼い主様は、ご相談ください。

医療情報確認日:2026年10月25日

参考文献・参考資料
  1. Cornell University College of Veterinary Medicine. Urinary tract infections.
  2. Weese JS, et al. International Society for Companion Animal Infectious Diseases (ISCAID) guidelines for the diagnosis and management of bacterial urinary tract infections in dogs and cats. The Veterinary Journal. 2019;247:8–25.
  3. American College of Veterinary Surgeons. Urinary Obstruction in Dogs.
  4. University of Melbourne. Australian Veterinary Prescribing Guidelines: Urinary tract.
  5. Clare S, et al. Short- and Long-Term Cure Rates of Short-Duration Trimethoprim-Sulfamethoxazole Treatment in Female Dogs with Uncomplicated Bacterial Cystitis. J Vet Intern Med. 2014;28:818–826.

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