【第2回】犬猫に多い「皮膚の腫瘍」——しこりを見つけたときに考えたいこと
1. はじめに
1-1. 皮膚のしこりは相談の多いお悩みです
こんにちは!国分寺ハートアニマルクリニックです。
診察のなかで、「体になにかしこりを見つけました」というご相談はとても多くあります。小さなものから大きなものまで見た目はさまざまですが、皮膚のしこりは腫瘍の早期発見につながる重要なサインです。
1-1-1. 見た目だけでは分からない難しさ
丸くて柔らかいしこりが「良さそうに見える」こともあれば、目立たない小さなしこりが思いのほか性質の強い腫瘍であることもあります。この「見た目だけでは判断できない」という点が、皮膚の腫瘍のむずかしいところです。
2. 皮膚腫瘍の代表的なタイプ
2-1. 肥満細胞腫という腫瘍
犬でよくみられる皮膚の腫瘍に「肥満細胞腫」があります。皮膚の表面や皮下にコリっとしたしこりとして現れ、場所や形、大きさはさまざまです。
2-1-1. 大きさや形が変わりやすいことも
肥満細胞腫は、触ったあとに急に腫れたり、日によって大きさが違って見えたりすることがあります。このような特徴から、最初はアレルギー反応のように見えることもあり、判断が難しくなることがあります。
2-2. 良性のしこりとの違い
脂肪のかたまりである脂肪腫や、いぼのような良性腫瘍は、ゆっくり大きくなっていくことが多く、命に直結することはあまりありません。
2-2-1. 「良性だから放っておいてよい」とは限らない理由
たとえ良性であっても、関節の近くや首まわりなど、動きに関わる場所にできると、生活のしづらさや炎症の原因になります。そのため、性質だけでなく「場所」や「大きさ」「生活への影響」も踏まえて対応を考えていきます。
3. しこりを見つけたときの受診のタイミング
3-1. 自宅で観察してほしいポイント
しこりの大きさが急に変わる、赤みが出ている、触ると嫌がるといった変化がある場合は、できるだけ早めにご相談ください。
3-1-1. 写真やメモでの記録も役に立ちます
大きさや見た目の変化は、毎日見ていると意外と気づきにくいものです。気になり始めたタイミングで写真を撮っておいたり、日付と一緒にメモを残しておいたりすると、診察時の大きな手がかりになります。
3-2. 動物病院で行う検査について
皮膚のしこりは、細い針を刺して細胞を採取し、顕微鏡で調べる「細胞診」という検査を行うことが多いです。
3-2-1. 細胞診で分かること・分からないこと
細胞診は体への負担が小さく、短時間で多くの情報が得られる検査です。ただし、腫瘍の種類によっては確定診断まで至らないこともあり、その場合には組織を一部切り取って詳しく調べる検査を行うこともあります。
4. まとめ
皮膚のしこりは、飼い主さんの「気づき」から始まることがほとんどです。早く見つかれば見つかるほど、治療の選択肢や予後の可能性が広がります。気になるしこりを見つけたときには、「様子を見る」前に、一度ご相談ください。
次回は、外から見えにくい「内臓の腫瘍」についてお話しします。
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