子犬に見られる代表的先天性心疾患と診断上のポイント
こんにちは!国分寺ハートアニマルクリニックです!
今回は子犬に認められる代表的な先天性心疾患と、その診断上の重要ポイントについて解説します。
子犬期に発見される心疾患の多くは、心室流出路の狭窄による圧負荷、あるいは心腔間短絡による容量負荷を背景とした循環動態の異常が中心となります。
これらは一見同じ“心雑音”として聴取されますが、病態生理や予後、治療適応は大きく異なります。本日は、循環動態の理解を軸に、画像診断と重症度評価のポイントを整理していきます。
1. 肺動脈狭窄症(PS)とは
- 肺動脈狭窄症とは、右心室から肺動脈へ血液が流れ出す出口が狭くなる先天性心疾患です。狭窄は弁部、弁下部、弁上部のいずれかで起こり、狭窄の程度によって右心室にかかる圧負荷が増大します。その結果、右心室の壁が肥厚し、長期的には右心不全や易疲労、失神の原因となります。
- 症状
・運動耐性の低下や疲れやすさ
・易疲労や元気消失
・発作性の失神
・右心不全徴候(腹水や肝腫大など) - 胸部X線での評価ポイント
・右心室肥大の存在
・肺血流の減少
・肺動脈突出
・心陰影の形態変化 - 心エコーでの評価ポイント
・狭窄部の圧較差測定
・右心室壁肥厚の評価
・弁の形態や運動異常
・流速測定による重症度評価 - 中等度以上の狭窄や症状がある場合は、バルーン肺動脈拡張術が第一選択となり、重症例では外科的介入も検討されます。
2. 大動脈狭窄症/大動弁下部狭窄(AS/SAS)とは
- 大動脈狭窄症とは、左心室から大動脈への血流が狭くなる疾患で、特に弁下型は左室流出路の膜状や筋性の狭窄によって左心室に圧負荷を生じます。長期的には左心室肥大や虚血、不整脈、左心不全の原因となることがあります。
- 症状
・運動耐性の低下
・発作性失神や急な衰弱
・収縮期心雑音の聴取
・突然死リスクの増加 - 胸部X線での評価ポイント
・左心室肥大の確認
・心拡大の有無
・大動脈基部の突出
・肺血流の変化 - 心エコーでの評価ポイント
・狭窄部圧較差の測定
・左心室肥厚の評価
・弁形態の異常
・流速や圧勾配による重症度評価 - 中等度以上の場合は、外科的切開やバルーン拡張術で狭窄を改善することが推奨され、症状管理にはβ遮断薬の使用もあります。
3. 心室中隔欠損症(VSD)とは
- 心室中隔欠損症とは、左心室と右心室を隔てる中隔に孔があり、左→右シャントによって右心系に容量負荷がかかる先天性疾患です。シャント量が多いと肺血流増加や肺高血圧症を引き起こし、心不全に進展することもあります。
- 症状
・呼吸困難や頻呼吸
・易疲労や成長遅延
・心不全徴候(肝腫大、腹水)
・心雑音の聴取 - 胸部X線での評価ポイント
・心拡大の有無
・肺血流増加の確認
・肺動脈の拡張
・肺うっ血の所見 - 心エコーでの評価ポイント
・シャントの位置・サイズの測定
・左→右シャントの圧較差
・右心系の拡大評価
・心室壁運動の異常 - 大型孔や症状のある症例では、外科的閉鎖術やカテーテルによる閉鎖術が推奨されます。
4. 心房中隔欠損症(ASD)とは
- 心房中隔欠損症とは、左心房と右心房を隔てる中隔に孔があり、左→右シャントが発生します。右心系に容量負荷がかかり、長期的には肺高血圧症のリスクがあります。
- 症状
・運動耐性低下
・頻呼吸や呼吸困難
・右心不全徴候(腹水や肝腫大)
・心雑音(拡張期・収縮期) - 胸部X線での評価ポイント
・右心拡大
・肺血流増加
・肺動脈突出
・心陰影形態の変化 - 心エコーでの評価ポイント
・シャントの位置・流量測定
・右心系拡大の評価
・心房中隔膜の形態
・流速測定による圧較差評価 - 大型孔や症状がある症例では、外科的閉鎖術やカテーテル閉鎖術によってシャントを閉鎖することが推奨されます。
5. 動脈管開存症(PDA)とは
- 動脈管開存症とは、胎生期に存在する大動脈と肺動脈をつなぐ動脈管が出生後も閉鎖せず、左→右シャントが生じる先天性疾患です。左心系に容量負荷がかかり、肺血流増加や左心拡大、進行すると心不全を引き起こします。
- 症状
・運動耐性低下や易疲労
・呼吸困難、頻呼吸
・成長遅延
・心雑音(連続性の「機械音様雑音」) - 胸部X線での評価ポイント
・左心拡大
・肺血流増加
・大動脈・肺動脈拡張
・心陰影の変化 - 心エコーでの評価ポイント
・動脈管の開存部位・径の測定
・左→右シャントの流量評価
・左心系拡大の有無
・流速測定による圧差評価 - 症状がある場合カテーテル閉鎖術や外科的結紮術でシャントを閉鎖することが推奨されます。
まとめ
子犬に認められる代表的な先天性心疾患には、肺動脈狭窄症、大動脈狭窄症・大動弁下部狭窄、心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、動脈管開存症があります。これらは大きく「流出路狭窄による圧負荷疾患」と「シャントによる容量負荷疾患」に分類され、病態生理が異なります。
流出路狭窄では心室に持続的な圧負荷がかかり、心筋肥厚や虚血、不整脈リスクが問題となります。一方、シャント疾患では左→右短絡により肺血流増加や心拡大が生じ、進行すると肺高血圧症や心不全へと移行します。
診断においては、心雑音の聴取部位やタイミングの把握が第一歩となり、胸部X線では心拡大の様式や肺血流の増減を評価します。確定診断および重症度判定には心エコー検査が不可欠であり、圧較差測定、シャント流速解析、心腔拡大の評価が重要な指標となります。
早期診断と適切な重症度分類は、外科的介入やカテーテル治療の適応判断に直結します。子犬期における心雑音は“経過観察でよいもの”と“速やかに精査すべきもの”の鑑別が重要であり、循環動態を理解したうえでの総合的評価が求められます。
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