猫の胸水貯留
以前に、犬の呼吸困難で投稿させていただいたように、猫さんでも呼吸が苦しくなってしまう原因というのは様々あります。
よく診察でみられるのが、季節の変わり目などで猫風邪などをひいてしまい、鼻がつまってしまうことはよくみられます。
それが、慢性的に鼻腔内で炎症が続いてしまうと慢性鼻炎のような形で残ってしまうことも多々見受けられます。
ほかにも、鼻腔内や喉咽頭部などに発生した腫瘍が原因で呼吸がしずらくなってしまうこと症例や
肺炎、肺吸虫などの寄生虫感染、
鬱血性の心不全(肥大型心筋症や拘束型心筋症など)
甲状腺機能亢進症による二次性の心筋症による心不全
内分泌疾患による代謝性の呼吸速拍、中毒、重度な貧血など
犬と同様に様々な呼吸悪化の原因が考えられます。
今回の症例はその中でも、胸腔内にお水がたまってしまった
猫ちゃんの胸部X線検査と超音波画像になります。
胸部X線検査では、正常の胸部画像と比較すると心臓まわりが白くなっていることがわかります。
超音波画像では、心臓がバクバクと拍動していますが、周辺に黒い液体で満たされています。これは異常所見であり、この液体を抜かない限り、苦しい状態がづづいてしまいます。
根本的な病態の治療はもちろんですが、このまま胸水が溜まりつづけると、低酸素血症などを引き起こし生命維持に支障をきたしてしまいます。
もちろん、胸水を抜去するリスクもあります。
胸に針をさすことにより猫が痛がってしまうこと 胸腔内の血管や肺を傷つけてしまうこと
胸腔内の胸水を抜去することにより、虚脱をおこしてしまうこと
針などのを複数回、刺すことにより感染を引き起こすことなど
今回の症例は、開口呼吸をしていて呼吸が苦しく食欲の減退が見られたため胸水抜去を実施いたしました。
このような病態は若齢時での心臓病などから胸水や肺水腫を引き起こす症例もいますが、比較的、高齢猫でよくみられます。
ご自宅での猫ちゃんは最近、いつもと比べて呼吸の回数は速くないでしょうか?
猫は病気を隠してしまう動物です。
お水を飲む量がふえていないかどうか、咳のような症状
開口呼吸はしていないが、鼻での呼吸がはやいなど
自宅での小さなサインを見逃さないようにしっかりチェックしましょう!!
記事執筆者:国分寺ハートアニマルクリニック 院長牛尾俊之