犬・猫の誤食は命に関わることも|催吐処置の正しい考え方 誤食は時間との勝負

こんにちは!国分寺ハートアニマルクリニックです!

ここ最近、チョコやお菓子などの誤食が相次いでおります。

バレンタインデーも終わりましたが次はホワイトデーが待っています。

しかし、気をつけるのはチョコの誤食だけでないです。

「少し目を離したすきに、薬を飲んでしまった」
「チョコレートの袋を破っていた」
「靴下がなくなっている…」

このような誤食事故は、動物病院では日常的に遭遇する緊急トラブルです。

下の写真は当院で検査したX線検査での写真になります。

そして、治療の結果を左右する最大のポイントは、

“どれだけ早く適切な対応ができたか”

です。

今回は、誤食時の正しい行動、催吐できる時間の限界、胃洗浄や紹介対応まで含めて、医学的根拠に基づいて解説します。


■ 誤食とは?なぜ危険なのか

誤食とは、本来食べるべきでない物を飲み込んでしまうことを指します。

代表的な例として、

・人の薬(鎮痛薬・睡眠薬など)
・チョコレート、玉ねぎ、ぶどう
・電池、硬貨
・おもちゃ、布、靴下
・竹串、骨

などがあります。

これらは、

✔ 中毒
✔ 消化管損傷
✔ 腸閉塞
✔ 消化管穿孔

につながる可能性があり、重症化すると命に関わります。

「元気そうだから様子を見る」は、最も危険な判断になることがあります。


■ まず飼い主様が確認すべき3つのポイント

誤食に気づいたら、次の3点を整理してください。

① 何を食べたか
② いつ食べたか
③ どれくらい食べたか

可能であれば、パッケージや写真を持参していただくと、診断精度が大きく向上します。


■ 催吐処置とは何か

催吐処置とは、胃の中にある異物や毒物を吐かせて体外へ排出する医療行為です。

適切なタイミングで実施できれば、

・手術の回避
・中毒症状の軽減
・入院期間の短縮

につながる重要な治療法です。

しかし、催吐には明確な「時間制限」があります。


■ 【重要】催吐が有効とされる時間帯

▶ 胃内容物の移動時間

犬や猫の胃内容物は、通常、

摂取後 約1〜3時間で小腸へ移行する

とされています。

小腸へ移動すると、吐かせても回収が困難になります。


▶ 主な参考文献

以下の国際的ガイドラインに基づいています。

  • The Merck Veterinary Manual(2023–2024)
  • Plumb’s Veterinary Drug Handbook 第9版(2018年)
  • BSAVA Small Animal Formulary 第10版(2020年)
  • ASPCA APCC Guidelines(2019–2023年)

これらでは共通して、

「誤食後1〜2時間以内が最も有効」

とされています。


▶ 一般的な時間の目安

経過時間催吐の有効性
0〜2時間◎ 最も有効
2〜4時間△ 条件付き
4時間以上✖ 原則困難

※個体差・誤食内容により例外あり


▶ 誤食後の経過時間と催吐処置の有効性

時間が経過するほど、回収率は急激に低下します。


■ 時間だけで判断してはいけない理由

以下の場合は、胃内滞留時間が延びることがあります。

・脂肪分の多い食事
・大量摂取
・高齢動物
・基礎疾患による胃運動低下

そのため、最終判断は必ず獣医師による評価が必要です。


■ 当院での誤食対応について

当院では、誤食内容・経過時間・全身状態を評価し、以下から最適な方法を選択します。

✔ 催吐処置
✔ 胃洗浄
✔ 紹介対応(内視鏡など)
✔ 外科手術
✔ 経過観察

症例ごとに最善の選択を行います。


■ 胃洗浄が必要となるケース

催吐で十分な除去ができない場合には、胃洗浄を検討します。

胃洗浄とは、鎮静または麻酔下でチューブを用いて胃内を洗浄する処置です。

▶ 主な適応例

・催吐が無効
・大量摂取
・中毒物質
・意識低下
・嘔吐困難

▶ リスク

・麻酔リスク
・誤嚥
・胃粘膜損傷
・循環不安定

慎重な判断が必要です。


■ 当院で使用する催吐方法と副作用

● バソラミン

・ふらつき
・軽度鎮静
・効果不十分


● アポモルヒネ(主に犬)

・強い眠気
・興奮
・頻回嘔吐
・脱水
・心拍変動


● クレボル点眼

・結膜充血
・流涙
・刺激感

使用後は洗眼処置を行います。


■ 催吐・胃洗浄を行わないケース

❌ 尖った異物
❌ 洗剤・腐食性物質
❌ 石油製品
❌ 意識障害
❌ 呼吸異常

無理な処置は重大事故につながります。


■ 内視鏡対応について(2026年2月19日現在)

2026年2月19日現在、当院では内視鏡による異物摘出には対応しておりません。

必要な場合は、ERや二次診療施設へ速やかにご紹介します。


■ 来院が遅れた場合のリスク

対応が遅れると、

✔ 内視鏡不可
✔ 開腹手術
✔ 長期入院
✔ 重症化

につながる可能性があります。


■ 予防が最大の治療です

✔ 薬は必ず収納
✔ ゴミ箱は密閉
✔ 床に物を置かない
✔ 留守前チェック

特に若齢期は注意が必要です。


■ まとめ|誤食は「すぐ相談」が最善です

誤食対応の基本は、

・時間との勝負
・自己判断しない
・早期受診

です。

「大丈夫かな?」と思った時点で、すでに相談のタイミングです。

大切なご家族を守るため、正しい知識と早い行動を心がけましょう。


【参考文献】

  • The Merck Veterinary Manual, Gastrointestinal Motility, 2023–2024
  • Plumb DC. Plumb’s Veterinary Drug Handbook, 9th ed. 2018
  • BSAVA Small Animal Formulary, 10th ed. 2020
  • ASPCA Animal Poison Control Center Guidelines, 2019–2023

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