犬の膀胱結石|食事で溶ける石・溶けない石、手術と再発予防
犬の膀胱結石は、尿の成分が固まって膀胱内にできる石です。血尿や頻尿の原因になるほか、尿道に移動して尿の通り道をふさぐことがあります。一方、症状がなく、検査で偶然見つかることもあります。
「食事で溶けるのか」「手術が必要なのか」は、結石の種類だけでなく、症状、位置、大きさ、感染、尿道閉塞の危険性によって変わります。ここでは犬の膀胱結石を中心に、検査と治療、ご家庭での注意点を説明します。
膀胱結石でみられる症状
少量ずつ何度も排尿する、尿に血が混じる、排尿に時間がかかる、途中で尿が途切れる、陰部を気にする、粗相が増えるなどがみられます。これらは膀胱炎などでも起こり、症状だけでは結石の有無を判断できません。排尿姿勢をとっていても、実際に尿が出ているかを確認することが大切です。[2,3]
結石の種類で治療が変わります
結石には、ストルバイト、シュウ酸カルシウム、尿酸塩、シスチンなどがあります。尿の濃さや成分、感染、代謝、遺伝的な背景などが関わり、食事や飲水量だけですべてを説明できる病気ではありません。複数の成分が混じる場合もあります。[1,2]
| 種類 | 溶解治療 | 確認する背景 |
|---|---|---|
| ストルバイト | 条件が合えば療法食などで溶解を目指す | 犬では細菌感染の関与が多く、尿培養も重要 |
| シュウ酸カルシウム | 食事や薬で溶かすことはできない | 除去の必要性、再発予防、カルシウム代謝など |
| 尿酸塩 | 症例を選び、食事・薬による溶解を検討 | 門脈体循環シャントや遺伝的な背景など |
| シスチン | 症例を選び、内科的な溶解を検討 | 尿へのシスチン排泄、病型による去勢の適応など |
同じ「尿路用フード」がすべての結石に適するわけではありません。[1,2]
犬のストルバイト結石では、尿の性質を変える細菌が関係することがあります。この場合、石だけでなく感染への対応も必要です。一方、シュウ酸カルシウム結石に対しては、療法食で「今ある石を溶かす」のではなく、再発しにくい尿の状態を目指します。[1,2]
どのような検査で分かる?

尿検査・尿培養
尿の濃さやpH、血液成分、結晶、細菌などを調べます。ただし、結晶が出たから必ず結石があるとは限らず、結晶がなくても結石は否定できません。尿のpHや結晶の形は推定の材料ですが、それだけで石の成分を確定することはできません。[2]
感染が疑われる場合は、尿培養と薬剤感受性検査を検討します。採尿方法や投薬歴によって解釈が変わるため、すでに飲んでいる薬があればお知らせください。自宅で尿を採れなくても、受診を遅らせる必要はありません。
レントゲン・超音波検査
画像検査では、石の位置、大きさ、数、膀胱壁や腎臓・尿管への影響を調べます。レントゲンで見えやすい石もあれば、写りにくい石もあるため、検査を組み合わせます。特に排尿障害がある場合は、膀胱だけでなく尿道の状態も確認します。[2,3]
結石分析
排出された石や治療で回収した石は、成分分析によって再発予防に役立てます。見た目が似ていても成分が異なることがあり、複合した石もあるため、色や形だけで決めません。血液検査では腎機能、電解質、カルシウムなど、状態に応じて背景を調べます。[2,5]
食事で溶かす治療の利点と注意点
ストルバイトが疑われ、尿が正常に通り、療法食や必要な薬を使える場合には、溶解治療を検討します。手術を避けられる可能性がある一方、効果が出るまで時間がかかり、定期的な画像検査で石が小さくなっているかを確認する必要があります。[1]
療法食を食べない、持病などから適さない、感染を制御できない、症状が続く場合には、計画を見直します。治療中に石が尿道へ移動する危険もあるため、「小さくなっているから安全」とは限りません。尿が出ないときは、食事の効果を待つ場面ではありません。[1,3,4]
研究データ:溶解治療を受けた犬50頭
2021年の報告では、ストルバイト結石が疑われ、特定の療法食を用いた犬50頭の診療記録を調べています。結果は次の4区分でした。[4]
対象:ストルバイト膀胱結石が疑われた犬50頭
各棒の背景全体は50頭(100%)を表します。
4区分の意味・研究条件・出典
- 完全溶解:画像上で石が消失。
- 部分溶解:石の大きさや数は減ったものの、完全溶解には至らなかった。
- 溶解なし:少なくとも4週間治療した後の最終画像で、石の減少がなかった。
- 判定不能:再度の腹部画像検査がない、または4週間未満の時点で減少がなかった。
単施設の後ろ向き研究。2007〜2019年の症例で、療法食はHill's s/d缶、抗菌薬の併用は症例によって異なります。すべての石がストルバイトと確認されていたわけではありません。当院の治療成績や、すべての膀胱結石の治癒率を示すものではありません。
Wingert AM, et al. 2021. Efficacy of medical dissolution for suspected struvite cystoliths in dogs.
このデータの要点は、溶ける可能性を検討しつつ、画像で反応を確かめることです。食事を続けているだけで安心せず、変化が乏しい場合は成分の推定と治療方針を再評価します。
手術や除去が必要になる場合
溶けない石で症状がある、閉塞の危険がある、溶解治療が適さない場合などは、結石の除去を検討します。膀胱を切開して取り出す方法のほか、症例や設備によって内視鏡、砕石、低侵襲の回収方法などが選択肢になります。これらすべてを当院で実施するという意味ではなく、適応に応じて専門施設への相談も含めて検討します。[1,3]
除去によって石による刺激や閉塞の原因に対応できますが、麻酔、出血、感染、尿漏れ、石の残存などのリスクがあります。術後の確認と、回収した石の分析が重要です。取り除いたことだけで、その後の再発がなくなるわけではありません。[3]
尿道閉塞では、尿を排出できるようにする処置と全身状態の安定化を優先します。腎機能や血液中のカリウムへの影響を評価し、状態に合わせて結石の治療を進めます。ご家庭でおなかを押して尿を出そうとしないでください。[3]
無症状なら経過観察できますか?
症状がなく、尿道閉塞を起こしにくいと判断した石では、定期的な画像検査と観察を選ぶことがあります。ただし、小さな石が必ず安全というわけではありません。尿道へ入り込む大きさや形の石には閉塞の危険があり、症状がなくても治療を勧めることがあります。[1]
再発予防で大切なこと
再発予防は石の成分と背景に合わせます。感染に関連したストルバイトでは感染の管理が重要で、すべての犬に同じ療法食を一生続けるわけではありません。シュウ酸カルシウムなどでは、尿の濃縮を避ける工夫、食事の調整、必要な追加検査を組み合わせます。[1,5]
- 新鮮な水を自由に飲めるようにし、粗相を減らすための飲水制限はしない。
- 必要に応じてウェットフードや食事への加水を相談する。食事制限のある持病も考慮する。
- 療法食を使用する場合は、おやつや他のフードとの併用も確認する。
- 排尿の機会を確保し、尿の色・量・勢いの変化を記録する。
- 尿検査だけでなく、指示された画像検査にも通う。
自己判断で尿を酸性にするサプリメントなどを追加しないでください。結石の種類によって目標が異なり、別の石ができやすい条件を作ることがあります。手作り食を希望する場合も、必要な栄養を満たしながら尿路の管理ができるか相談しましょう。[1,5]
よくあるご質問
血尿がなくなれば石も消えていますか?
症状の改善だけでは石の消失を確認できません。溶解の評価には画像検査が必要です。
尿の結晶がなくなれば安心ですか?
結晶と結石は別の所見です。尿検査の結果と画像所見、症状を合わせて判断します。
尿路用の市販フードで治療できますか?
名称だけでは、結石の溶解に適しているか判断できません。治療用と再発予防用の目的を区別し、石の種類や持病に合った食事を選びます。
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医療情報確認日:2026年10月26日
参考文献・参考資料
- Lulich JP, et al. ACVIM Small Animal Consensus Recommendations on the Treatment and Prevention of Uroliths in Dogs and Cats. J Vet Intern Med. 2016;30:1564–1574.
- American College of Veterinary Surgeons. Urinary Stones.
- American College of Veterinary Surgeons. Urinary Obstruction in Dogs.
- Wingert AM, et al. Efficacy of medical dissolution for suspected struvite cystoliths in dogs. J Vet Intern Med. 2021;35:2287–2295.
- University of Minnesota Urolith Center. Treatment recommendations.
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