犬の安静時呼吸数・睡眠時呼吸数の測り方|何回なら正常?心臓病の受診目安

「犬の呼吸数は1分間に何回なら正常?」「寝ているときに呼吸が速い気がする」「心臓病なので自宅で呼吸数を測るように言われた」――このようなご相談は、循環器診療で非常によくあります。

犬の安静時呼吸数(resting respiratory rate:RRR)や睡眠時呼吸数(sleeping respiratory rate:SRR)は、ご自宅で簡単に測定でき、特に僧帽弁閉鎖不全症(MMVD)などの心疾患がある犬では、うっ血性心不全の変化に気づくための重要なモニタリング項目です。

ただし、「30回/分を超えたら必ず肺水腫」「40回/分までは絶対に大丈夫」というように、1つの数字だけで判断するものではありません。測定条件、普段の呼吸数からの変化、呼吸努力、咳・元気・食欲などを合わせて評価することが大切です。

犬の「安静時呼吸数」と「睡眠時呼吸数」の違い

安静時呼吸数(RRR)は、犬が落ち着いて横になっているなど、運動・興奮していない状態で測る呼吸数です。

睡眠時呼吸数(SRR)は、犬が実際に眠っている状態で測定します。一般に睡眠中は興奮や周囲の刺激の影響が少ないため、心臓病の自宅モニタリングでは特に使いやすい指標です。

犬の呼吸数はどうやって測る?

1.眠っている、または十分に落ち着いているときを選ぶ

散歩直後、遊んだ直後、興奮しているとき、暑くてパンティングしているときは測定に適しません。

2.胸またはお腹の上下を数える

胸郭やお腹が「上がって下がる」1往復を1回の呼吸として数えます。

3.できれば1分間測る

60秒間そのまま数える方法が分かりやすく、難しい場合は30秒間数えて2倍します。不規則な呼吸では1分間測定する方が確実です。

4.1回だけでなく記録する

日付・時間・呼吸数を記録し、同じ条件に近づけて繰り返し測ることで、その犬自身の「いつもの値」が分かります。動画を撮影して後から数える方法も有用です。

犬の睡眠時呼吸数は何回が正常?

健康な成犬114頭を自宅で調べた研究では、平均的な睡眠時呼吸数は約13回/分で、各犬の平均睡眠時呼吸数が23回/分を超えた犬はいませんでした。

無症候性の左心系心疾患を持つ犬190頭では、睡眠時呼吸数の平均は16回/分で、多くの犬が25回/分未満でした。また、治療によって安定している左心性うっ血性心不全の犬でも、多くは睡眠時・安静時呼吸数が30回/分未満でした。

したがって、睡眠時呼吸数が継続的に30回/分を超えてくる場合は、心疾患のある犬では獣医師へ相談する一つの目安になります。ただし、30回という数字だけで肺水腫を診断することはできません。

「30回/分を超えたら肺水腫」ではありません

呼吸数は、室温、痛み、不安、発熱、呼吸器疾患、貧血、睡眠の深さなど、心臓以外の要因でも増加します。夢を見ているREM睡眠中には、一時的に呼吸が速くなったり不規則になったりすることもあります。

ACVIMのMMVDコンセンサスでは、自宅で測定した安静時呼吸数がその犬の通常値から上昇することは、心不全の臨床的悪化を予測するうえで重要な指標とされています。「何回か」という絶対値だけでなく、普段の基準値からの持続的な上昇を見ることが大切です。

心臓病の犬で呼吸数を測る意味

MMVDが進行すると、左心房圧の上昇などを背景に肺水腫を起こすことがあります。肺に水分が貯留すると呼吸数が増えることがあり、自宅での呼吸数モニタリングは心不全の悪化を早期に疑うための実用的な方法です。

ただし、呼吸数だけでは心不全を確定できません。呼吸が増えている場合は、胸部レントゲン、心エコー、身体検査などによって肺水腫・胸水・肺炎・気管支疾患などを区別する必要があります。

心雑音がある犬は呼吸数を測った方がよい?

心雑音があるすべての犬が毎日測定しなければならないわけではありません。ただし、MMVDなどの心疾患が診断されている犬、とくに心拡大がある犬や過去に心不全を経験した犬では、自宅での呼吸数記録が非常に役立ちます。

心雑音については、「犬の心雑音とは?原因・グレード・心エコー・治療開始の目安」をご覧ください。

僧帽弁閉鎖不全症(MMVD)の犬ではどう見る?

MMVDでは、ACVIM分類のB1・B2ではまだうっ血性心不全を起こしていません。Stage Cでは現在または過去にうっ血性心不全を経験しています。

特にStage C以降では、自宅での呼吸数・心拍数のモニタリングが推奨されており、通常値からの呼吸数上昇は臨床的悪化を察知するための重要な情報になります。

MMVDのステージについては、「僧帽弁閉鎖不全症|B1・B2の違いと薬を始めるタイミング」も参考にしてください。

すぐに受診した方がよい呼吸のサイン

呼吸数の数字以上に重要なのが、呼吸の仕方です。次のような症状がある場合は、呼吸数が30回/分未満でも早めの受診が必要です。

  • 安静にしていても明らかに呼吸が苦しそう
  • お腹を大きく使って呼吸している
  • 首を伸ばして呼吸している
  • 横になれず、座った姿勢で呼吸している
  • 夜眠れず、何度も体勢を変える
  • 舌や歯ぐきが青紫色・白っぽい
  • 失神・虚脱がある
  • 咳が急に増え、呼吸状態も悪い
  • 呼吸数が普段より明らかに増え、その状態が続く

呼吸困難が疑われる場合は、自宅で何度も呼吸数を測って様子を見るより、速やかに動物病院へ連絡してください。

犬の呼吸が速い原因は心臓病だけではありません

  • 暑さ・熱中症
  • 興奮・不安
  • 痛み
  • 発熱
  • 肺炎
  • 気管・気管支疾患
  • 胸水・気胸
  • 貧血
  • 代謝性疾患
  • 薬剤の影響

呼吸数が多いからといって自己判断で心臓薬や利尿薬を追加することは避けてください。

呼吸が速く、お腹の動きが目立つ場合は、「犬の呼吸が速くておなかで動くときの原因」もご覧ください。

自宅での記録方法

日付睡眠時呼吸数咳食欲・元気気になる変化
例:10/418回/分なし普段通りなし
例:10/520回/分少し普段通り夜に咳1回

数字だけでなく、咳、食欲、活動性、失神、呼吸努力なども一緒に記録することをおすすめします。

よくある質問

Q.犬の呼吸数が30回/分なら異常ですか?

1回だけ30回/分前後だったという理由だけで異常とは断定できません。睡眠中に繰り返し30回/分を超える、普段の値から持続的に上昇している、呼吸努力や咳などを伴う場合は獣医師へ相談してください。

Q.40回/分ならすぐ病院へ行くべきですか?

安静・睡眠状態で40回/分前後が持続している場合は、測定条件を確認したうえで早めに動物病院へ相談することをおすすめします。特に呼吸が苦しそう、横になれない、チアノーゼなどがあれば緊急性があります。

Q.寝ているときに一時的に呼吸が速くなるのは大丈夫ですか?

夢を見ているときなどには、一時的に呼吸が速くなったり不規則になったりすることがあります。数分後に深く眠った状態でもう一度測定してください。

Q.15秒数えて4倍でもよいですか?

規則的な呼吸なら簡便法として使えますが、心臓病のモニタリングでは30秒〜1分間、可能なら1分間測る方が誤差を減らせます。

Q.毎日測る必要がありますか?

病気のステージや治療状況によって異なります。心不全治療中などでは毎日の記録が有用なことがあります。主治医から指示された頻度を基本にしてください。

まとめ

犬の安静時・睡眠時呼吸数は、ご自宅でできる非常に有用な健康モニタリングです。特にMMVDなどの心疾患がある犬では、普段の呼吸数を知り、その値からの持続的な上昇を早く見つけることが重要です。

一方、「30回/分」という数字だけで肺水腫を診断することはできません。呼吸努力、咳、元気・食欲、失神などを含めて評価します。国分寺・小平・小金井周辺で愛犬の呼吸数や心臓病について気になることがございましたら、国分寺ハートアニマルクリニックへご相談ください。当院の循環器診療についてはこちらから、検査内容や診療の流れをご確認いただけます。


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参考文献

  1. Keene BW, Atkins CE, Bonagura JD, et al. ACVIM consensus guidelines for the diagnosis and treatment of myxomatous mitral valve disease in dogs. J Vet Intern Med. 2019;33:1127-1140.
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  4. Porciello F, Rishniw M, Ljungvall I, et al. Sleeping and resting respiratory rates in dogs and cats with medically-controlled left-sided congestive heart failure. Vet J. 2016;207:164-168.
  5. Schober KE, Hart TM, Stern JA, et al. Effects of treatment on respiratory rate, serum natriuretic peptide concentration, and Doppler echocardiographic indices in dogs with congestive heart failure. J Am Vet Med Assoc. 2011.

医療情報確認日:2026年10月4日