犬がハァハァして呼吸が荒い|暑くないのに続く原因・危険なサインと受診目安
犬が「ハァハァ」と口を開けて呼吸すること自体は珍しくありません。運動後、暑い環境、興奮時などには、体温を逃がすためのパンティング(panting)として正常にみられます。
一方で、暑くないのにハァハァが止まらない、安静にしていても息が荒い、落ち着かず呼吸が速い、お腹を大きく使って呼吸している場合は、痛みや発熱、呼吸器疾患、心疾患などが隠れていることがあります。
特に重要なのは、呼吸数だけでなく呼吸にどれくらい力が必要になっているかを見ることです。首を伸ばす、肘を外に開く、お腹を大きく使う、横になれない、舌や歯ぐきの色がおかしいといった変化があれば緊急性があります。
この記事では、犬がハァハァして呼吸が荒いときに考えられる原因、正常なパンティングとの違い、自宅で確認するポイント、すぐに動物病院を受診すべきサインについて獣医師が解説します。
犬の「ハァハァ」には正常なパンティングと病的な呼吸があります
パンティング(panting)
犬は口を開けて浅く速い呼吸をするパンティングによって熱を逃がします。運動後、暑い場所、興奮時などにみられ、涼しい場所で休むと次第に落ち着くのであれば生理的な反応のことがあります。
頻呼吸(tachypnea)
頻呼吸は呼吸回数が増えている状態です。運動や興奮でも増えますが、安静時や睡眠中にも速い状態が続く場合には、肺・胸腔・心臓の病気、発熱、痛み、貧血、代謝異常などを考える必要があります。
努力呼吸・呼吸困難
胸やお腹を大きく使う、首を伸ばす、肘を外側へ開く、横になることを嫌がるなど、呼吸そのものに強い努力が必要になっている状態は重要な緊急サインです。呼吸数の数字だけで「まだ大丈夫」と判断しないでください。
すぐに受診したい危険なサイン
- 胸やお腹を大きく使って苦しそうに呼吸する
- 首を伸ばす、肘を外に開くなど呼吸しやすい姿勢をとる
- 横になれず、座ったり立ったりしたまま呼吸している
- 舌や歯ぐきが青紫色、灰色、著しく白っぽい
- 意識がぼんやりする、倒れる、ふらつく
- 安静にしても呼吸状態が改善しない、または悪化している
- 熱中症が疑われる
呼吸が荒いときの受診目安
運動・暑さ・興奮のあとで、涼しい場所で休むと速やかに普段の呼吸へ戻る。
暑くないのにハァハァが続く、安静時・睡眠時も呼吸が速い、咳・元気低下・食欲低下などを伴う。
お腹を大きく使う、首を伸ばす、横になれない、舌や歯ぐきの色がおかしい、ふらつく・倒れるなど。
※呼吸数だけで緊急性を判断せず、呼吸の努力や全身状態を合わせて確認します。
重い呼吸障害では、検査より先に酸素投与などの安定化処置が必要になることがあります。移動や保定で悪化することもあるため、重症そうな場合は来院前に動物病院へ電話で状況を伝えてください。
犬が暑くないのにハァハァする主な原因
1.痛み・不安・興奮
腹痛、整形外科的な痛み、術後の痛みなどでパンティングが増えることがあります。雷、来客、移動などへの強い不安や興奮でも呼吸は速くなります。静かな環境に移しても続く場合や、姿勢・食欲・活動性にも変化がある場合は診察が必要です。
2.発熱・熱中症
高温多湿の環境、車内、激しい運動などでは体温が上昇し、激しいパンティングがみられます。熱中症では元気消失、ふらつき、嘔吐・下痢、意識状態の変化などを伴うことがあり、緊急対応が必要です。
3.上部気道の問題
短頭種気道症候群、喉頭麻痺、上気道の腫れや異物などでは、空気の通り道が狭くなり、呼吸音が大きくなったり、吸うときに苦しそうになったりします。暑さや興奮で急激に悪化することもあります。
4.気管・気管支・肺の病気
気管虚脱、気管支炎、肺炎、肺腫瘍などでも、咳、運動不耐性、頻呼吸、努力呼吸がみられることがあります。咳の有無だけでなく、呼吸の深さ、努力、呼吸音も重要です。
5.胸腔内の異常
胸水や気胸などによって肺が十分に広がれなくなると、浅く速い呼吸や努力呼吸がみられることがあります。突然の呼吸困難では緊急性が高い病態もあります。
6.心臓病・心不全・肺水腫
僧帽弁閉鎖不全症(myxomatous mitral valve disease:MMVD)などが進行し、うっ血性心不全から肺水腫を起こすと、安静時・睡眠時の呼吸数が増えたり、呼吸努力が強くなったりします。
心臓病の犬では、家庭で眠っているときの睡眠時呼吸数(sleeping respiratory rate:SRR)を継続して測ることが有用です。健康な成犬や無症候性の心疾患犬では、家庭で測定したSRRは多くの場合30回/分未満と報告されています。ただし、1回の数字だけで心不全を診断するものではなく、普段の値からの持続的な上昇や呼吸努力などを合わせて評価します。
測り方は「犬の安静時呼吸数・睡眠時呼吸数の測り方」で詳しく解説しています。
7.貧血・代謝性疾患など
重度の貧血、酸塩基平衡の異常、全身性疾患などでも呼吸が速くなることがあります。呼吸器や心臓だけが原因とは限らないため、必要に応じて血液検査などで全身状態を確認します。
「落ち着かない+息が荒い」ときは何を見る?
「犬 落ち着きがない 息が荒い」「犬 ハァハァしてる 落ち着かない」といった状態では、単なる興奮だけでなく、痛み、呼吸苦、発熱などで楽な姿勢が取れず落ち着かない可能性もあります。
横になれるか、眠れるか、呼吸にお腹を強く使っていないか、粘膜色に異常がないか、咳・失神・嘔吐・腹痛などを伴っていないかを確認してください。苦しそうな場合は動画撮影や呼吸数測定に時間をかけず受診を優先します。
自宅で睡眠時呼吸数を測る方法
- 運動直後や興奮時ではなく、涼しい環境でぐっすり眠っているときに測ります。
- 胸またはお腹が「上がって下がる」1往復を1回と数えます。
- できれば60秒間測定します。
- 心疾患がある犬では同じ条件で継続的に記録し、その子自身のベースラインからの変化を確認します。
パンティング中の呼吸回数と睡眠時呼吸数は同じ意味ではありません。ハァハァしている最中の回数をSRRの基準と単純比較しないことが重要です。
動物病院ではどのような検査をする?
まず呼吸状態を観察し、聴診、体温、粘膜色、循環状態などを確認します。呼吸状態が不安定な場合には、無理な保定を避けて酸素投与などの安定化を優先します。
状態に応じて、胸部レントゲン検査、血液検査、パルスオキシメトリー、心臓超音波検査(心エコー)などを組み合わせます。心雑音がある場合は、「犬の心雑音とは?原因・グレード・心エコー・治療開始の目安」も参考にしてください。
よくあるご質問
Q.暑くないのに犬がハァハァしています。病気ですか?
痛み、不安、発熱、呼吸器疾患、心疾患などでもパンティングは増えます。涼しく静かな環境で休ませても続く、呼吸努力が強い、元気や食欲にも変化がある場合は診察をおすすめします。
Q.ハァハァしているけれど元気なら様子を見ても大丈夫ですか?
運動・興奮・暑さのあとで、休むと速やかに普段の状態へ戻る場合は生理的なパンティングのことがあります。ただし、元気があっても呼吸努力が強い、何度も繰り返す、睡眠中も呼吸が速い場合は受診してください。
Q.睡眠時呼吸数が30回/分を超えたら心不全ですか?
30回/分を超えたことだけで心不全とは診断できません。一方、家庭でのSRRは心疾患のモニタリングに有用で、普段より持続的に増加している場合は重要な変化です。特に心臓病の治療中で上昇が続く場合は担当獣医師へ相談してください。
Q.呼吸が苦しそうなとき、自宅で何をすればよいですか?
運動を中止し、できるだけ興奮させず、涼しく換気された環境にしてください。努力呼吸、粘膜色の異常、虚脱などがある場合は自宅で長く様子を見ず、動物病院へ連絡してください。熱中症が疑われる場合は早期の冷却と迅速な獣医療が重要です。
まとめ|呼吸数だけでなく「呼吸の努力」を見てください
犬のハァハァは正常な体温調節の場合もありますが、暑くないのに続く、安静にしても改善しない、落ち着かない、睡眠中も速い場合には病気が隠れていることがあります。
特に、お腹を大きく使う、首を伸ばす、横になれない、粘膜色がおかしい、意識状態が悪いなどは緊急サインです。国分寺・小平・小金井周辺で愛犬の呼吸が普段と違うと感じた場合は、早めにご相談ください。
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参考文献・参考資料
- Keene BW, et al. ACVIM consensus guidelines for the diagnosis and treatment of myxomatous mitral valve disease in dogs. J Vet Intern Med. 2019;33:1127-1140.
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- Tonozzi CC. Clinical Signs of Respiratory Disease in Animals. MSD Veterinary Manual. Full review April 2026.
- Mandell DC, Thawley VJ, Burkitt-Creedon JM, et al. RECOVER Guidelines: First Aid for Dogs and Cats. Clinical Guidelines. J Vet Emerg Crit Care. 2026;36(Suppl 1):S36-S62. doi:10.1111/vec.70138.
医療情報確認日:2026年10月7日
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