猫が食べているのに痩せる|甲状腺機能亢進症の症状・検査・治療

「よく食べているのに痩せてきた」「以前より鳴く・落ち着きがない」。中高齢の猫にこうした変化があるときは、甲状腺機能亢進症が原因の一つとして考えられます。ただし、食欲や見た目だけでは診断できません。糖尿病、腎臓病、消化器の病気なども確認する必要があります。

腰まわりが細く見える茶灰色の猫が、白い器のフードを食べている様子。

食事中の痩せた猫を表現した説明用イメージです。実際の症例写真ではなく、見た目だけで病気を診断することはできません。

元気に動き回っていても、体重が減り続けているなら早めにご相談ください。この記事では、飼い主様が気づきやすい症状から、検査、治療の利点と注意点、通院中に確認することまでをご案内します。

食欲・体重・行動の変化に気づきましょう

甲状腺機能亢進症(hyperthyroidism)は、首にある甲状腺からホルモンが過剰に分泌される病気です。体の代謝が高まり、食べていても体重や筋肉が減ることがあります。多くは甲状腺の良性の変化によりますが、まれに悪性の腫瘍が関係するため、「甲状腺の病気=がん」とは限りません。

食欲の増加だけでなく、水をよく飲む、尿が増える、嘔吐・下痢、毛づやの低下、落ち着きのなさ、鳴き声の増加なども見られます。「年齢のわりに活発になった」という変化が、体調の変化を示す場合もあります。一方、食欲が落ちて静かになる猫もおり、典型的な症状がそろわなくても否定はできません。[1,2]

体重は、できるだけ同じ体重計・条件で記録すると経過が分かりやすくなります。背中や腰の骨が以前より触れやすい、後ろ足の筋肉が細くなったといった変化も伝えてください。体重の数字が同じでも、筋肉と脂肪の割合が変わることがあるため、診察では両方を評価します。[5]

食べているのに痩せる原因

糖尿病・腎臓病・消化器の病気

糖尿病でも、食べているのに痩せる、多飲・多尿といった症状が見られます。慢性腎臓病では、体重減少や飲水・尿量の変化が重なることがあります。また、慢性的な腸の病気、消化・吸収の異常、腫瘍なども鑑別に含まれます。複数の病気が同時にあることも珍しくないため、甲状腺ホルモンだけで判断しません。[1]

「食べているつもり」でも、実際の摂取量が減っている場合があります。器に近づく回数だけでなく、一日に出した量と残した量、ほかの猫との取り合い、食べにくそうな様子も確認しましょう。口の痛みや食事環境なども含めて診察で伺います。[5]

体重が減ったときの受診の目安

すぐに電話で相談

口を開けて苦しそうに呼吸する・倒れる・けいれんする
急に見えにくそうになり、物にぶつかる

早めに診察を予約

食べているのに体重が減り続ける
水や尿が増える・落ち着きや鳴き方が変わった

受診時に持参するもの

体重・食事量・飲水や排尿の記録
症状の動画、薬・サプリメント、過去の検査結果

呼吸困難、虚脱、けいれん、急な視覚の異常があれば、甲状腺の病気かどうかを自宅で判断せず、すぐに動物病院へ連絡してください。高血圧による眼や脳への障害など、対応を急ぐ病気が考えられます。診療時間外は救急対応の動物病院へ相談し、LINEの返信や翌日の予約まで待たないでください。[7]

食べない、繰り返し吐く、ぐったりしている場合も、当日中に病院へ連絡して受診のタイミングを確認しましょう。元気・食欲があっても体重減少が続く場合は、次の定期健診まで長く待たずにご相談ください。

甲状腺と全身の状態を調べます

ホルモン値と症状を合わせて判断します

血液検査で甲状腺ホルモンを調べ、症状、身体検査、ほかの検査結果と合わせて判断します。ホルモンの数値だけで病気の有無を決めつけず、これまでの経過も確認します。過去の検査結果があれば、受診時にお持ちください。[1,3]

病気の段階や併存疾患によって、検査値の解釈が難しい場合があります。疑いが残るときは、体調や経過に応じて再検査や追加検査を検討します。一度の検査結果だけで安心せず、体重減少などの変化が続く場合はご相談ください。[1,3]

血液・尿・血圧と必要に応じた心臓の検査

診察では体重や筋肉量、脱水、首の触診、心音などを確認します。血球の検査、腎臓・肝臓などの血液検査、尿検査で併存疾患を調べ、血圧も評価します。心雑音や呼吸の異常などがあれば、心エコー検査や胸部の画像検査を検討します。必要な検査は全身状態に合わせて選びます。[1,5]

治療の選択肢と利点・注意点

内服薬でホルモンの作りすぎを抑えます

抗甲状腺薬のチアマゾール(methimazole)は、甲状腺ホルモンの合成を抑える薬です。国内では猫用の承認製剤があります。薬の量や回数は、ホルモン値だけでなく腎臓や心臓の状態、投薬のしやすさも踏まえて決めます。処方された製剤の指示に従い、飲み忘れても自己判断でまとめて追加しないでください。[4]

内服治療は量を調整できる一方、甲状腺の異常な組織そのものを取り除く治療ではないため、継続的な管理が必要です。副作用には食欲低下、嘔吐、元気の低下、顔や首の強いかゆみなどがあり、まれに肝障害や血球の異常が問題となります。黄疸、出血、強いかゆみ、明らかな体調悪化があれば、次の投薬前に処方した病院へすぐ連絡してください。[1,3]

食事療法とほかの食べ物への注意

甲状腺ホルモンの材料となるヨウ素を制限した療法食で管理できる猫もいます。ただし、効果を得るには原則としてその療法食だけを与える必要があり、おやつ、同居猫の食事、人の食べ物などが管理の妨げになります。十分な効果が得られない場合や、腎臓病など別の病気の食事療法との調整が必要な場合もあります。[3]

市販食を自己判断で「ヨウ素が少なそうなもの」に替えたり、海藻やサプリメントで調整したりしないでください。食べない状態を我慢させて療法食を続けることも避けます。内服薬との組み合わせや切り替えは、検査結果を見ながら相談します。

手術・放射性ヨウ素治療

甲状腺の摘出手術は、病変に直接対処できる方法ですが、麻酔のリスクや、副甲状腺への影響による低カルシウム血症などの合併症、再発の可能性があります。適応や実施施設について個別に検討します。海外では放射性ヨウ素治療も行われていますが、専用の設備・管理が必要で、治療後に甲状腺機能が低下するリスクもあります。当院で実施できる治療としての案内ではありません。[2,3]

治療後の心臓・血圧・腎臓の確認

心臓の変化と心筋症の評価

甲状腺ホルモンが過剰になると心拍数が上がり、心筋が厚くなるなどの変化が起こることがあります。治療によって改善する場合もありますが、別の心疾患を併発している可能性もあるため、必要に応じて心エコーで経過を確認します。心不全がある場合は、甲状腺の治療と並行した対応が必要です。[2]

高血圧が認められる猫では、目、脳、腎臓などを守るための治療も検討します。血圧は診察時の緊張で上がる場合があるため、落ち着ける環境での測定や繰り返しの評価が大切です。ホルモン値が改善しても、血圧の確認は続けます。[7]

治療後に分かる腎臓病について

甲状腺機能亢進症と慢性腎臓病は、互いの検査所見を分かりにくくすることがあります。治療後に腎臓の数値が変化しても、それだけで「薬が腎臓を壊した」とは判断できません。甲状腺の状態が落ち着いたことで、もともとの腎機能低下が明らかになる場合もあります。[6]

一方、治療で甲状腺ホルモンを下げすぎることも腎臓に不利となるため、ホルモン値と腎機能を合わせて評価します。腎臓病があるから甲状腺を放置するのではなく、両方の状態を確認して治療を調整することが重要です。[1,6]

通院と自宅管理のポイント

治療開始時や薬の量を変えた後は、比較的短い間隔で再診が必要です。国内承認製剤のチロブロック錠では、開始後3か月までは2〜4週ごと、その後は2〜3か月ごとの確認が用法に記載されています。実際の日程は製剤、体調、副作用、併存疾患に応じて決め、異常があれば予定日まで待ちません。[4]

自宅では、実際に食べた量、体重、飲水・排尿、便や嘔吐、鳴き方、活動性、服薬の記録を残しましょう。動画は診察室では見られない変化を伝える助けになります。薬を嫌がる場合も、自己判断でやめたり剤形を変更したりせず、続けやすい方法をご相談ください。[5]

よくあるご質問

元気で食欲があれば様子を見られますか?

元気そうに見えることだけでは、体への負担を判断できません。甲状腺機能亢進症と診断された場合は、症状や併存疾患に合わせて治療を検討します。体重減少の原因が未確認なら、食事量を増やすだけで済ませず検査を受けましょう。[3]

薬でよくなったら中止できますか?

内服薬で数値や症状が改善しても、病気そのものがなくなったとは限りません。必要量は経過で変わることがあるため、定期検査を受けながら調整します。副作用が疑われる場合は、次の投薬前に連絡してください。[3]

寿命はどのくらいですか?

見通しは、診断時の全身状態、腎臓・心臓などの併存疾患、選択した治療と反応によって異なります。一律に「あと何年」とは言えませんが、適切な治療と継続管理によって体調の改善を目指せます。体重の回復だけでなく、無理なく食べて過ごせるかも大切な評価項目です。[2,5]

体重の変化を診療につなげましょう

国分寺ハートアニマルクリニックでは、症状と検査結果を踏まえて、必要な検査や治療の進め方をご相談します。食事や投薬を含めて継続しやすい方法を一緒に考えます。過去の体重・血液検査結果があれば、受診時にお持ちください。

関連する記事

猫が水をよく飲む・尿が増える|糖尿病の症状・検査と治療

猫が食べない|原因・受診の目安と食欲増進剤の使い方

猫の慢性腎臓病|初期症状・治療と寿命の見通し

参考資料

1. Carney HC, et al. 2016 AAFP Guidelines for the Management of Feline Hyperthyroidism. J Feline Med Surg. 2016;18:400–416.

2. Cornell Feline Health Center. Hyperthyroidism in Cats. 2026年4月更新.

3. AAHA. 2023 AAHA Selected Endocrinopathies of Dogs and Cats Guidelines. Feline Hyperthyroidism:Diagnostic Testing and Monitoring/Therapy.

4. あすかアニマルヘルス株式会社. チロブロック錠1.25mg・2.5mg 製品情報・用法用量.

5. Ray M, et al. 2021 AAFP Feline Senior Care Guidelines. J Feline Med Surg. 2021;23:613–638.

6. Geddes R, Aguiar J. Feline Comorbidities: Balancing hyperthyroidism and concurrent chronic kidney disease. J Feline Med Surg. 2022;24:641–650.(要旨を参照)

7. Cornell Feline Health Center. Hypertension. 2021年更新.

医学情報確認日:2026年10月9日


ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。

LINE友だち追加で診察予約・最新情報がチェックできます!!

LINE友だち追加


国分寺、小平、小金井周辺にお住まいの飼い主様
定期的な健康チェックから心臓病、歯のお悩みまで、気になることがございましたらご相談ください。
大切なペットが元気に過ごせるよう、スタッフ一同サポートいたします


国分寺ハートアニマルクリニック
東京都国分寺市本多3-3-5プラザ明和1階
042-316-8631