猫の膵炎|食べない・元気がないときの症状・検査・治療
猫の膵炎(すいえん、pancreatitis)は、吐く症状が目立たず、「食べない」「元気がない」といった変化で見つかることがあります。食欲低下だけで膵炎と決めることも、吐いていないから否定することもできません。全身状態を確認し、血液検査と腹部超音波検査などを組み合わせて評価します。[1,2]

食欲低下の様子を表した説明用の生成画像です。実際の症例写真ではなく、見た目だけで膵炎を診断することはできません。
吐いていなくても食欲と元気の変化に注意
いつもの食事を残す、食器に近づいても顔を背ける、隠れて過ごす時間が増える、動きたがらないなどの変化に気づくことがあります。嘔吐・下痢・体重減少を伴う場合もありますが、すべてがそろうわけではありません。猫は痛みをはっきり示さないこともあり、鳴かないことだけで「痛くない」とは判断できません。[2,3]
診察時には「食べない」の程度を具体的にお伝えください。まったく口にしていないのか、いつもの半分程度なのか、おやつだけ食べるのかで確認する内容が変わります。最後に普段どおり食べた時刻、実際に食べた量、吐いた回数をメモしておくと役立ちます。
膵炎以外の病気も同時に考えます
食欲が落ちる原因には、口の痛み、腎臓や肝臓の病気、腸の病気など、さまざまなものがあります。膵炎に慢性的な腸の病気、胆管炎、糖尿病などが併存することもあります。一つの臓器だけで説明しようとせず、既往歴や現在の治療を含めて確認します。[2,3]
症状から受診を考える場合は、猫が食べないときの原因と受診目安、猫の慢性腸症・炎症性腸疾患もご参照ください。
受診の目安
すぐに電話で連絡
呼吸が苦しい、倒れる、反応が鈍い、立てない、強く苦しがる場合。
当日中に相談
まったく食べない、繰り返し吐く、水も保てない、元気が明らかに落ちている場合。
早めに診察を予約
食べる量が少ない日を繰り返す、体重が減る、治療中でも回復が十分でない場合。
これは膵炎の自己診断のためではなく、受診を相談する目安です。緊急症状がある場合はLINEの返信や翌日の予約を待たず、診療時間外は救急対応の動物病院へ連絡してください。持病がある猫や体力の落ちている猫では、より早い対応が必要になることがあります。
検査は一つの数値で決めつけません
まず体重、脱水、体温、お腹の状態などを診察し、血液検査で腎臓・肝臓・血糖・電解質などを確認します。一般的な血液検査だけでは膵炎を判断できず、異常が軽い場合もあります。必要に応じて尿検査や、ほかの原因を調べる画像検査を追加します。[2]
膵臓の血液検査と腹部超音波検査
猫膵特異的リパーゼの検査(feline pancreatic lipase immunoreactivity:fPLI)は、膵臓由来の酵素を血液中で評価する検査です。膵炎の診断に役立ちますが、偽陰性・偽陽性があり、結果だけで確定または否定することはできません。数値は症状や経過と合わせて読み取ります。[4]
腹部超音波検査では、膵臓や周囲の組織に加え、腸・肝臓・胆道なども確認します。血液検査と画像の結果が一致しないこともあるため、疑いが残るときは経過観察や再検査を組み合わせます。「一度正常だった」という理由だけで、その後の食欲低下を放置しないことが大切です。[2,4]
治療の中心は水分・痛み・吐き気・栄養
治療は状態に応じた支持療法が中心です。比較的軽い場合には通院で管理できることもありますが、脱水が強い、食べられない、全身状態が悪い場合は入院や専門施設への紹介を検討します。治療日数は一律ではなく、食事量や併存疾患への対応も含めて判断します。[2]

猫の膵炎では、全身状態に応じて水分補給、吐き気と痛みへの対応、栄養補助を組み合わせます。[2,3]
点滴と症状の緩和
輸液は脱水や電解質の異常を補うために行います。ただし、多ければよいわけではなく、過剰な輸液を避ける必要があります。心臓や腎臓の状態も踏まえ、呼吸や体重などを確認しながら調整します。[1]
吐き気には制吐薬、痛みには鎮痛薬を使い、食べられる状態を整えます。薬によって注射時の痛み、眠気、便秘などに注意が必要です。食欲増進剤を併用する場合もありますが、吐き気や痛み、栄養不足への対応の代わりにはなりません。投薬後の様子が普段と違う場合はご連絡ください。[3]
食事を止め続けず栄養を確保します
自己判断で長く絶食させることは避けます。十分に食べられない状態では栄養不足が進むため、吐き気への対応と並行して栄養補助を計画します。必要に応じて栄養チューブを検討し、食事・水分・薬を無理なく届ける方法を選びます。[2,3]
チューブには必要な栄養を確保しやすい利点がある一方、設置や管理の負担、感染などの合併症があります。長く食べていなかった猫では急に大量の栄養を与えることにも注意が必要です。嫌がる口へ食事を無理に押し込み続けず、給餌の方法と量をご相談ください。[3]
低脂肪食はすべての猫に必要ですか?
猫の膵炎では、すべての猫に一律に脂肪制限が必要とする十分な根拠はありません。食べやすさ、必要なエネルギー、腸・腎臓などの併存疾患を踏まえて食事を選びます。犬の膵炎の説明をそのまま当てはめたり、低脂肪という表示だけで療法食を替えたりせず、現在のフードをお知らせください。[1]
抗菌薬・ステロイドは必要性を個別に判断
膵炎だから必ず抗菌薬を使うわけではありません。感染や併存疾患など、その薬が必要な理由を確認して選択します。慢性的な炎症に対して副腎皮質ステロイドを検討する場合もありますが、糖尿病への影響などを考慮し、治療への反応を確認します。余っている薬を自己判断で再開しないでください。[1]
回復後も食事量と体重を確認
落ち着いた後は、食べた量、活動性、嘔吐・便の変化、体重、薬の使用状況を記録しましょう。記録は簡単なメモや写真で構いません。家族が交代で食事を与える場合は、誰かが与えた量ではなく、猫が実際に食べた量を共有すると分かりやすくなります。
再診では検査値だけでなく、食欲や生活の変化も確認します。回復後に再び食べなくなった場合、膵炎の再燃だけでなく別の問題も考える必要があります。次の予約日まで待ってよいか迷うときは、変化が始まった時刻と症状をお伝えください。
よくあるご質問
吐いていなくても膵炎の可能性はありますか?
あります。食欲低下や元気のなさだけが目立つこともあります。ただし、その症状だけで膵炎と決めず、ほかの病気も含めて検査します。[2]
治ったかどうかは数値だけで分かりますか?
検査値だけで回復を判断することはできません。食事量、体重、痛みや吐き気、全身状態と合わせて評価します。[1,4]
診察時に持参するとよいもの
普段のフードやおやつの名称、使用中の薬・サプリメント、過去の検査結果をご用意ください。吐いた物や便の写真、家での動きが分かる短い動画も参考になります。撮影を優先して受診を遅らせる必要はありません。
国分寺ハートアニマルクリニックでは、食欲や体重の変化を伺い、必要な検査と継続管理をご相談します。国分寺・小平・小金井周辺で猫の食欲低下が気になる飼い主様は、まず症状をお知らせください。
関連記事:食欲低下と食欲増進剤/慢性腸症・炎症性腸疾患/猫の糖尿病
参考文献
[1]Forman MA, et al. ACVIM consensus statement on pancreatitis in cats. Journal of Veterinary Internal Medicine. 2021;35:703–723. doi:10.1111/jvim.16053
[2]Cornell Feline Health Center. Feline Pancreatitis. 更新2021年。
[3]Taylor S, et al. 2022 ISFM Consensus Guidelines on Management of the Inappetent Hospitalised Cat. Journal of Feline Medicine and Surgery. 2022;24:614–640. doi:10.1177/1098612X221106353
[4]Xenoulis PG, Steiner JM. Canine and feline pancreatic lipase immunoreactivity. Veterinary Clinical Pathology. 2012. PubMed
医学情報確認日:2026年10月12日
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