猫が水をよく飲む・尿が増える|糖尿病の症状・検査と治療
「水の器がすぐ空になる」「猫砂のかたまりが大きくなった」「よく食べるのに痩せてきた」。こうした変化は、猫の糖尿病で見られることがあります。ただし、水をよく飲む原因は糖尿病だけではありません。慢性腎臓病や甲状腺機能亢進症などでも起こるため、症状だけで決めつけず、血液と尿を調べることが大切です。

飲水の様子を伝える説明用イメージです。実際の症例写真ではありません。
国分寺ハートアニマルクリニックでは、飼い主様が気づいた変化を伺い、診察と検査を通して原因を確認します。この記事では、受診の目安、糖尿病の検査、治療の選択肢とご家庭での注意点をご案内します。
水と尿の「量」の変化を見ましょう
一日に飲む水が増える状態を多飲、尿量そのものが増える状態を多尿といいます。トイレに行く回数が増えても、毎回少量しか出ていない場合は頻尿です。多尿と頻尿では考える病気や緊急度が異なります。猫砂のかたまりの大きさ、回数、排尿時の様子を一緒に確認してください。
糖尿病では、尿に漏れ出たブドウ糖と一緒に水分が失われ、尿量が増えることがあります。その水分を補うために、水をよく飲むようになります。食欲があっても体重が減る、毛づやが悪くなる、活動が減る、後ろ足のかかとを床につけるように歩く、といった変化にも注意しましょう。
受診を急ぐ症状
すぐに連絡
ぐったり・嘔吐・食べない・呼吸の異常
いきむのに尿が出ない/出たか不明
早めに診察
水や尿の増加が続く
食欲があっても体重が減る
診察で伝えること
いつから変化したか・食事・薬
飲水量・尿・体重の記録
ぐったりする・吐く・食べないとき
多飲・多尿や体重減少に加えて、食欲が落ちた、繰り返し吐く、ぐったりして動かない、呼吸がおかしいときは、すぐに動物病院へ連絡してください。糖尿病の重い合併症である糖尿病性ケトアシドーシスや、ほかの緊急疾患が隠れていることがあります。翌日の予約まで待たず、診療時間外は救急対応の動物病院に相談してください。
トイレでいきむのに尿が出ないとき
何度もトイレでいきむのに尿が出ない、数滴しか出ない、出ているか判断できない場合も、すぐに連絡が必要です。尿道閉塞の可能性があり、最初は元気そうに見えることもあります。お腹を押して尿を出そうとせず、採尿のために受診を遅らせないでください。
元気でも、飲水量の増加が続くとき
新たな多飲・多尿が続く場合は、元気や食欲があっても早めに診察を受けましょう。体重減少もある場合は特に重要です。水を飲む回数だけで判断せず、「いつから」「以前と比べてどのくらい」「食事や薬が変わったか」を伝えると診察に役立ちます。
糖尿病以外にも原因があります
慢性腎臓病
腎臓が尿を濃くする働きに問題が生じると、尿と一緒に水分が失われ、多飲・多尿につながることがあります。血液検査だけでなく、尿の濃さを示す尿比重や、脱水の有無などを合わせて評価します。尿が薄いという結果一つだけで腎臓病と確定することはできません。
甲状腺機能亢進症
中高齢の猫では、甲状腺ホルモンが過剰になる病気も考えます。食べているのに痩せる、水や尿が増える、落ち着きがなくなるなど、糖尿病と似た症状が出ることがあります。必要に応じて甲状腺ホルモンを測定し、心臓や腎臓の状態も確認します。
食事・薬・暮らしの変化
ウェットフードからドライフードへの変更で、水の器から飲む量が増えることもあります。食事に含まれる水分も含めて考える必要があります。利尿薬などの影響も確認します。薬やサプリメントの名前、食事の種類、最近の変更をお知らせください。処方薬は自己判断で中止しないでください。
糖尿病はどのように診断する?
血糖値が一度高いだけでは確定しません
猫は通院時の緊張で、一時的に血糖値が高くなることがあります。持続する高血糖、尿糖、症状を合わせて判断し、必要に応じて再検査やフルクトサミンの測定などを行います。フルクトサミンは一定期間の血糖の傾向を見る補助検査ですが、短時間の低血糖を見つける検査ではありません。
尿検査と全身の状態の確認
尿糖、尿比重、ケトン体などを調べ、血液検査では腎臓・肝臓や電解質の状態も評価します。診察では体重、筋肉量、脱水、ほかの病気の兆候を確認します。感染症や膵炎などの併存疾患が疑われる場合は、症状と検査結果に応じて追加の検査を検討します。
受診前の絶食や採尿が必要かは、事前にご確認ください。具合が悪いときに、自宅で検体が採れるまで待つ必要はありません。すでに糖尿病治療中の場合は、食事と投薬・注射の時刻、量、血糖測定の記録もお持ちください。
治療は猫の状態に合わせて選びます
インスリンと食事管理
インスリン治療は、猫の糖尿病で重要な選択肢です。製剤や必要量は猫によって異なり、食事、血糖の変化、生活リズムを踏まえて調整します。注射器やペンは製剤に適したものを使い、保管や投与方法の説明を受けましょう。注射できたか分からないときに、自己判断で追加投与するのは避けてください。
食事は糖質の量、必要なカロリー、体重、併存疾患を考えて選びます。肥満がある場合も、食事を急に減らしたり、食べない状態を放置したりせず、無理のない管理を行います。腎臓病などを併発している猫では、糖尿病用の食事がそのまま最適とは限りません。
飲み薬にも適応条件があります
SGLT2阻害薬は、腎臓から尿へ糖を排出させて血糖を下げるタイプの薬です。治療の選択肢となる猫もいますが、すべての猫に適しているわけではありません。食欲、脱水、ケトン体、併存疾患、インスリン治療歴などを確認し、使用できるかを慎重に判断します。具体的な選択は、使用する製剤の適応条件と診察結果に基づいて相談します。
この薬では、血糖値が著しく高くなくてもケトアシドーシスが起こることがあります。服用中に食欲低下、嘔吐、元気の低下があれば、血糖値だけで安心せず、次の投薬前にすぐ処方した動物病院へ連絡してください。下痢や脱水などにも注意し、定期的な診察と血液・尿の確認を続けます。
治療中の低血糖に注意
特にインスリン治療中に、ふらつき、震え、急な元気消失、けいれん、意識の低下が出たら、低血糖の可能性があります。すぐに動物病院へ連絡してください。事前に説明された緊急時の対応があれば、その指示に従います。意識がない、けいれんしている猫の口へ、食べ物や液体を無理に入れないでください。
食べなかった日、吐いた日、投与を忘れた日などにどうするかは、治療開始時に具体的な指示を確認しておきましょう。数字一つを見て、飼い主様だけで注射量を増減するのは避けてください。
ご家庭で記録したいこと
毎日の食欲と食事量、飲水量、尿の様子、元気、投薬・注射の記録が役立ちます。体重も定期的に測り、変化を共有しましょう。水の器には自由に飲める水を常に用意し、尿を減らす目的で飲水を制限しないでください。
飲水量は、入れた量と残った量の差を参考にします。ただし、こぼれた水、蒸発、給水器、多頭飼育では誤差が出ます。正確に測れなくても、以前との違いを伝えることに意味があります。猫砂や排尿の動画も、無理なく記録できる範囲でお持ちください。
血糖の管理には、必要に応じて自宅での測定や持続血糖モニターを活用する場合があります。装置の数値と体調を合わせて評価し、測定方法や再診の間隔は獣医師と相談します。診断後や治療変更後は確認が必要で、状態が安定しても定期的な見直しを続けます。
よくあるご質問
元気なら、次の健診まで待ってよいですか?
新たな多飲・多尿や体重減少が続くなら、健診まで長く待たずにご相談ください。食欲があることだけでは、糖尿病や腎臓病を否定できません。食べない、吐く、ぐったりするなどが加わった場合は、すぐに連絡してください。
尿糖の検査だけで診断できますか?
尿糖は判断材料の一つですが、症状、血糖の経過、服用中の薬などを合わせて評価します。尿検査だけで治療を始めたり、インスリンの量を決めたりすることはできません。
一生インスリンが必要ですか?
治療によってインスリンが不要になる寛解に入る猫もいます。ただし、すべての猫に起こるわけではなく、寛解後に再び治療が必要になることもあります。必要な量が変わった際の低血糖を防ぐためにも、獣医師の確認を受けながら調整し、寛解後も体重や飲水量を観察します。
水・尿・体重の変化をご相談ください
「最近水をよく飲む」「尿が増えた」「食べるのに痩せる」と感じたら、国分寺ハートアニマルクリニックへご相談ください。気づいた時期と食事・薬の情報をもとに、必要な検査や治療についてご案内します。緊急の症状があるときは、WEB予約やLINEの返信を待たずにお電話ください。
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参考資料
Cornell Feline Health Center. Feline Diabetes.
Cornell Feline Health Center. Hydration.
Cornell Feline Health Center. Hyperthyroidism in Cats.
International Renal Interest Society. Urine Specific Gravity.
医学情報確認日:2026年10月8日
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