猫が繰り返し吐く・下痢が続く|慢性腸症・炎症性腸疾患の検査と治療

猫の嘔吐や下痢が繰り返されるときは、毛玉や食べ過ぎだけでなく、慢性的な腸の病気も考えます。食欲があっても体重が減っている場合は、検査を受けるきっかけになります。ただし、症状だけで炎症性腸疾患と決めることはできません。原因を調べ、食事や薬をその猫に合わせて選ぶことが大切です。

茶灰色の猫が床に低くしゃがみ、少量の吐いたフードのそばにいる様子。

嘔吐の症状を表した生成画像です。実際の症例写真ではなく、画像だけで原因を診断することはできません。

繰り返す嘔吐・下痢と体重の変化

「吐いた後は元気だから」「以前からお腹が弱いから」と、症状が日常になっていませんか。吐く回数が増えた、便が軟らかい日が続く、食べる量が変わった、背中や腰が細くなったといった変化を記録してください。下痢がなくても、嘔吐や体重減少が腸の病気のサインになることがあります。[1,2]

診察では、いつから、どのくらいの頻度で、食事との関係はあるかを伺います。「よく吐く」という表現だけでなく、日付と回数、吐いた物の写真、可能なら吐く前後の動画があると状況を共有しやすくなります。無理に撮影を続けず、苦しそうな場合は連絡を優先してください。

考えられる原因は腸の炎症だけではありません

食事の影響、寄生虫、異物、膵臓・肝臓の病気、慢性腎臓病、甲状腺機能亢進症などでも似た症状が起こります。腸に病変があっても、炎症と消化管リンパ腫では評価や治療の考え方が異なります。複数の病気が重なることもあるため、消化器だけに絞らず確認します。[1,3]

慢性腸症と炎症性腸疾患の違い

慢性腸症(chronic enteropathy:CE)は、持続・反復する消化器症状について、腸以外の病気や感染症などを調べたうえで用いる考え方です。炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)は、その中で炎症性の病変が関係する病態を指します。「長く吐いている=IBD」とは限らず、食事への反応や組織の検査も踏まえて判断します。[1]

受診を急ぐサイン

すぐに電話で相談

ぐったりして立てない、呼吸が苦しそう、強い腹痛、誤食・中毒の疑いがある。

当日中に相談

何度も吐く、水を飲んでも吐く、食べない、血が混じる、元気が落ちている。

早めに診察を予約

元気な日もあるが嘔吐・下痢を繰り返す、体重が減る、食事を替えても再発する。

慢性的な症状がある猫でも、急に悪化したときは別の問題が起きている可能性があります。いつもの腸の不調と思い込まず、状態を電話でお伝えください。緊急時はLINEの返信や翌日の予約を待たず、診療時間外は救急対応の動物病院へご相談ください。[3]

検査は段階的に組み合わせます

まず診察と体重の確認に加え、必要な血液・尿・便の検査で、全身の病気や寄生虫などを調べます。食事・おやつ・薬・サプリメントの履歴も重要です。腹部超音波検査では、腸の壁や周囲のリンパ節、ほかの腹部臓器を確認します。検査項目は経過と体調に合わせて選びます。[1,3]

超音波だけでIBDと断定しません

腸が厚く見えることだけで、炎症かリンパ腫かを確定することはできません。必要に応じて腸の組織を採取する生検を相談します。内視鏡や手術では採取できる場所・深さが異なり、麻酔や処置に伴う負担も考慮します。専門施設への紹介を含め、検査で得たい情報とリスクを説明して進めます。[1,2]

病理組織検査でも判定が難しい場合は、細胞の性質を調べる追加検査などを組み合わせます。一つの結果だけで断定せず、症状・画像・組織の所見を総合します。[1]

治療は食事・薬・栄養管理を調整

食事療法を評価できる形で続けます

食事への反応を調べる場合は、これまでの食歴を確認して療法食を選びます。指定した食事以外のおやつや同居猫のフードが混ざると、評価が難しくなります。切り替え方と評価の時期を決め、便・嘔吐・食事量を記録しましょう。短期間に何種類も替える前にご相談ください。[2]

療法食を食べないときに、空腹になるまで我慢させることは避けます。栄養不足を防ぐことも治療の一部です。吐き気や痛み、食事環境を見直し、必要な栄養を確保する方法を相談します。食欲増進剤だけで原因が解決するわけではありません。[4]

炎症を抑える薬と副作用の確認

炎症性の病態では、食事療法に加えて副腎皮質ステロイドなどを検討します。炎症を抑える利点がある一方、糖尿病や免疫抑制などの副作用に注意が必要です。症状と検査結果を確認しながら量を調整するため、良くなっても自己判断で増減・中止せずご相談ください。[2]

リンパ腫など別の診断に至った場合には、それに応じた治療が必要です。薬の選択肢が似て見えても、診断、投薬計画、確認する副作用は同じとは限りません。治療で一時的に改善したことだけを、病気の確定の根拠にはしません。[1]

ビタミンB12と食べるための支援

消化器の病気では、コバラミン(cobalamin:ビタミンB12)が不足する場合があります。必要に応じて測定し、不足があれば補充を検討します。補充の方法や再評価の時期は個別に決め、腸や膵臓の病気の評価と並行して進めます。[4,5]

十分に食べられない状態では、制吐薬などによる吐き気への対応や、必要に応じた栄養補助も検討します。嫌がる猫の口へ無理に食事を押し込むと、食事への嫌悪などにつながるため避けてください。栄養チューブは選択肢の一つですが、設置や管理に伴う合併症も説明したうえで判断します。[4]

自宅の記録を次の診察につなげます

記録する項目は、嘔吐の日時・回数、便の状態、食べた量、体重、投薬状況です。すべてを細かく埋めるより、続けられる方法を選びましょう。「前回よりどう変わったか」が分かると、次の相談が具体的になります。食事の袋や薬の名前が分かる写真も役立ちます。

受診時には、次の再診時期と、それより前に連絡すべき変化を確認してください。「吐かなくなったか」だけでなく、食事量や体重、日常の過ごし方も一緒に振り返ります。治療を続ける負担や投薬の難しさも遠慮なくお伝えください。

よくあるご質問

毛玉が出ていれば心配ありませんか?

毛が混じっていても、それだけで繰り返す嘔吐の原因を説明できるとは限りません。頻度の増加、食欲低下、体重減少があるときは検査をご相談ください。[3]

一度良くなったら通院は終わりですか?

再発することがあるため、症状の経過に応じて食事や薬、再診間隔を調整します。症状が落ち着いている間の記録も、維持する方法を考える材料になります。[2]

国分寺で猫のお腹の不調のご相談

国分寺ハートアニマルクリニックでは、症状の経過と検査結果を踏まえて、必要な検査や治療の進め方をご相談します。小平・小金井周辺からお越しの方も、これまでの検査結果や食事・薬の情報をお持ちください。繰り返す症状について、継続しやすい管理方法を一緒に考えます。

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参考資料

1. Marsilio S, et al. ACVIM consensus statement guidelines on diagnosing and distinguishing low-grade neoplastic from inflammatory lymphocytic chronic enteropathies in cats. J Vet Intern Med. 2023;37:794–816.

2. Cornell Feline Health Center. Inflammatory Bowel Disease. 2018年更新.

3. Cornell Feline Health Center. Vomiting. 2021年更新.

4. Taylor S, et al. 2022 ISFM Consensus Guidelines on Management of the Inappetent Hospitalised Cat. J Feline Med Surg. 2022;24:614–640.

5. Texas A&M University Gastrointestinal Laboratory. Serum Cobalamin (Vitamin B12) and Folate.

医学情報確認日:2026年10月10日


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