犬・猫が誤食したら|催吐薬の種類・吐かせてはいけない物と受診の目安

犬や猫が食べてはいけない物を飲み込んだときは、症状がなくても、まず動物病院へ連絡してください。吐かせる処置が役立つ場合もありますが、飲み込んだ物や体調によっては、吐かせることでかえって危険になることがあります。

催吐薬(さいとやく)は、嘔吐を起こして胃の中の物を排出させるために使う薬です。「誤食したら必ず使う薬」ではなく、獣医師が安全性と必要性を判断して使用します。この記事では、家庭での初動、吐かせてはいけない状況、犬と猫で使う薬の違いをご説明します。

誤食の相談は、LINEの返信や翌日の予約を待たずに

呼吸が苦しそう、けいれんしている、倒れた、反応が乏しい場合は、すぐに診療可能な動物病院へ連絡してください。症状がなくても、危険な物を飲み込んだ可能性があれば、その時点で相談が必要です。
当院へのお電話:042-316-8631
診療時間外や当院で受け入れが難しい場合は、現在対応できる救急病院へご連絡ください。

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誤食で起こる症状と、体への影響

誤食後には、嘔吐、よだれ、食欲低下、元気の消失、お腹の痛みなどが見られることがあります。飲み込んだ物によっては、ふらつき、震え、けいれんなどが起こる場合もあります。ただし、直後に元気だから安全とは限りません。

誤食の問題は、大きく「成分による中毒」と「物が詰まったり傷つけたりする障害」に分けて考えます。薬や有害な食品は中毒の原因となり、布、玩具、ひもなどは消化管の閉塞や損傷を起こすことがあります。包装ごと飲み込んだ場合には、両方の危険を考える必要があります。[1,2]

家庭で最初にすること

残っている物を片づけ、追加で食べないようにします。そのうえで動物病院へ電話し、分かる範囲の情報を伝えてください。正確な量や時刻が不明でも、調べ終わるまで連絡を遅らせないことが大切です。

図解1|電話で伝える4つの情報
① 何を

商品名・成分・包装・残りの実物。写真も役立ちます。

② いつ・どれくらい

見た時刻、最後に無事だった時刻、減っている量。

③ どの子が

犬・猫、体重、年齢、持病、使用中の薬。

④ 今の様子

意識、呼吸、嘔吐、よだれ、震え、元気の変化。

すべてそろっていなくても、先に連絡してください。

受診時には、包装や成分表示、同じ物の見本などを持参すると判断に役立ちます。吐いた場合は内容物を写真に残してください。危険な薬品や鋭い物は素手で扱わず、回収のために受診を遅らせないでください。

自宅で無理に吐かせないでください

塩、オキシドール、油などを自己判断で与えたり、口の奥へ指を入れたりしないでください。塩による中毒や、消化管の傷害、誤嚥など、別の問題を起こすおそれがあります。食べ物や飲み物を与えてよいかも、電話で確認しましょう。[3,4]

口や肛門からひもが見えても、引っ張らないでください。消化管の中で引っ掛かっている場合、引くことで傷つける危険があります。[2]

催吐処置が役立つ場合と、避ける場合

催吐処置は、飲み込んだ物が胃内に残っている可能性があり、吐かせるメリットが危険を上回ると判断した場合に検討します。意識や呼吸の状態、飲み込んだ物の種類・量・形、経過時間、持病などを合わせて判断します。[1,4]

「何時間以内なら必ず吐かせる」とは決まりません

一般に早い相談が重要ですが、胃から先へ進む速さは物の性質や食事の状況などで変わります。「時間がたったからもう何もできない」「早ければ必ず安全に吐かせられる」とは言えません。経過時間だけで受診を諦めないでください。[1]

吐かせると危険になり得るもの・状態

  • 強い酸・アルカリなど腐食性のある物:吐く際に食道などを再び傷つけるおそれがあります。
  • 灯油などの石油系製品:気道へ入り、肺を傷める危険があります。
  • 針・ガラス片など鋭利な物:戻す途中で食道などを傷つけるおそれがあります。
  • 意識低下、けいれん、飲み込む反射の異常など:吐いた物を気道へ吸い込む危険が高くなります。

これは代表例です。製品名だけで安全性を決めず、成分や状態を確認します。呼吸や循環の状態が不安定な場合には、まずその安定化を優先します。[1,4,5]

図解2|病院での判断の流れ
誤食物・経過時間・全身状態を確認
吐かせるメリットが危険を上回る

催吐薬を検討。処置中の体調と、出てきた物を確認します。

吐かせると危険/適さない

状態の安定化、検査、内視鏡・手術など、別の対応を検討します。

どちらの場合も、残存異物・中毒の危険と、その後の観察を判断

飼い主様が自宅で処置を選ぶための図ではありません。獣医師が個別に判断します。[1,2,4]

催吐薬のアレルギー反応にも注意

催吐薬でも、薬の成分に対するアレルギー反応(過敏反応)が起こることがあります。過去に薬で顔が腫れた、じんましんが出た、呼吸が苦しくなったなどの経験があれば、使用前に必ずお知らせください。[8,9]

投与後に顔の腫れ、じんましん、強いかゆみなどが見られた場合は、すぐに獣医師へ伝えてください。呼吸困難、急にぐったりする、倒れるといった変化は、重いアレルギー反応であるアナフィラキシーなどの可能性があり、速やかな対応が必要です。帰宅後に起こった場合も、様子を見ずに動物病院へ連絡してください。[9]

なお、催吐薬で想定される嘔吐や鎮静、点眼後の局所反応などが、すべてアレルギーというわけではありません。薬の作用や誤食物の影響も含めて、獣医師が判断します。

犬で使う催吐薬の種類と注意点

薬は、効き方だけでなく、誤食物、体調、投与方法、使用できない条件などを踏まえて選びます。以下は代表例で、当院で常時すべてを使用できることを示すものではありません。

ロピニロール点眼で嘔吐を誘発する薬

クレボルの有効成分はロピニロールです。国内では犬の嘔吐誘発を目的とした点眼薬として承認されています。目を刺激して吐かせるのではなく、吸収された薬が嘔吐に関わる受容体へ作用します。[5]

注射以外の投与方法という特徴がありますが、点眼だから安全性の確認が不要なわけではありません。目の充血や痛みを示す反応、元気の低下、心拍数の増加などに注意が必要です。目に病気や傷がある場合、鋭利な物や腐食性物質などを飲み込んだ場合には使用できない条件があります。犬用の薬を猫へそのまま使うことはできません。[5]

アポモルヒネ犬の嘔吐を誘発する薬

アポモルヒネは、犬の嘔吐に関わるドパミン受容体に作用する薬です。投与後には、意識や呼吸、嘔吐の持続などを観察します。中枢神経の抑制や長引く嘔吐などに注意が必要で、処置後も状態の確認が欠かせません。[4]

トラネキサム酸催吐目的の使用は承認された効能と異なります

日本では、トラネキサム酸を犬の催吐に用いた研究があります。一方、バソラミン注の承認された効能は止血に関するもので、催吐目的の使用は承認された効能とは異なります。獣医師が必要性とリスクを判断して使用します。[6,7]

トラネキサム酸は鎮静薬ではありません。催吐に関する研究では、けいれんなどの有害事象も報告されています。誤食物そのものの影響も含めて評価する必要があり、「副作用は軽いふらつきだけ」と考えないことが大切です。[7]

研究データ:薬の効果と処置後の対応

2025年に発表された無作為化臨床試験では、誤食が確認・疑われた犬132頭を対象に、ロピニロール点眼(63頭)とアポモルヒネの静脈内投与(69頭)を比較しました。

犬132頭の同一臨床試験で、ロピニロールとアポモルヒネの初回嘔吐率81%・99%、追加の制吐治療の割合37%・0%を比較したグラフ
  • 初回投与で嘔吐した割合:ロピニロール81%(51/63頭)、アポモルヒネ99%(68/69頭)。
  • 追加の制吐治療が必要だった割合:ロピニロール37%(23/63頭)、アポモルヒネ0%(0/69頭)。

この試験では、アポモルヒネの方が初回投与で嘔吐した割合が高く、追加の制吐治療を必要とした割合は低い結果でした。ただし、「吐いた割合」は誤食物を全量回収できた割合ではなく、追加の制吐治療の割合もアレルギー発生率ではありません。0%は、この試験では該当例がなかったことを示します。

犬を対象にした特定の条件での結果であり、猫やすべての症例にそのまま当てはめることはできません。薬は誤食物、体調、禁忌、投与方法などを踏まえて選び、処置後も観察します。

出典:Reeves RR, Mattison BL, Keys DA, Stastny T. Evaluation of Ropinirole versus Apomorphine for Emesis Induction in Dogs. J Vet Emerg Crit Care. 2025;35:105–111. 原著論文。割合は整数に丸めて表示。

猫では、犬と薬の選び方が異なります

犬と猫では、薬に対する嘔吐の反応が異なります。猫では、キシラジンやデクスメデトミジンなど、α2受容体に作用する薬を催吐目的で検討する場合があります。[4]

これらには鎮静作用があり、心拍数や血圧などへの影響にも注意が必要です。猫の全身状態を確認し、適否を判断して、処置中・処置後に観察します。吐かせることができない場合もあり、犬で使った薬や家庭で残っている薬を流用してはいけません。[4]

吐かなかった場合と、吐いた後の対応

吐けないからといって、薬を繰り返せばよいわけではありません

吐かない場合や十分に回収できない場合は、追加投与の可否を判断し、必要に応じて方針を変えます。異物の位置や種類に応じて画像検査、内視鏡、手術などを検討します。消化管の閉塞や損傷が疑われるときは、取り出す処置が必要になることがあります。[1,2]

胃洗浄も、催吐できなかったすべての症例に行う処置ではありません。適応を選び、気道を保護するなどの管理が必要です。活性炭は一部の有害物質の吸収を減らす目的で使いますが、すべての中毒に有効ではなく、異物を取り除くものでもありません。[1]

内視鏡など院内で対応できない処置が必要な場合は、対応可能な施設への紹介を検討します。

吐いたことと、安全になったことは同じではありません

吐いた物に誤食物が含まれていても、すべて回収できたとは限りません。また、すでに吸収された成分による影響が残る場合があります。飲み込んだ物に応じて、検査、点滴、経過観察などを続ける必要があります。[1]

帰宅後は、病院から指示された食事・飲水・再診の方法を守ってください。嘔吐が続く、ぐったりする、呼吸が変、震えるなどの変化があれば、予定の再診日を待たずに連絡しましょう。使っている薬、特に吐き気止めを含む薬の情報は、最初の相談時に伝えてください。[5]

よくあるご質問

飲み込んだところを見ていなくても相談できますか?

はい。「包装が破れている」「薬が足りない」「玩具の一部が見つからない」などの状況をお伝えください。飲み込んだ可能性を含めて判断します。

元気で食欲もあれば、翌日まで待てますか?

元気だけでは判断できません。症状が出る前に対応した方がよい場合もあるため、誤食に気づいた時点で連絡してください。

吐かせるより、手術で取り出す方が確実ですか?

手術には麻酔や手術自体の負担があります。催吐、内視鏡、手術のいずれが適切かは、物の種類・位置・体調によって変わります。安全に取り除く必要性と、それぞれのリスクを合わせて判断します。[2]

自宅に催吐薬を用意しておけば安心ですか?

薬があっても、自宅で安全に使えるかは別の問題です。誤食した物や体調によっては禁忌になるため、まず連絡先と受診先を確認しておくことが大切です。自己判断での投薬は避けてください。

誤食を防ぐために

薬、食品、ひも、玩具などは、犬や猫が開けられない場所に保管しましょう。ごみ箱や来客のバッグ、散歩中の拾い食いにも注意が必要です。過去に同じ物を食べても問題がなかったことは、次回の安全を保証しません。

国分寺・小平・小金井周辺で犬や猫の誤食に気づいた際は、まずお電話で状況をお知らせください。誤食物と体調を確認し、受診や必要な処置を判断します。

関連情報:犬猫の誤飲誤食に注意!自宅で起こりやすい事故と対策

参考文献・医学情報

医学情報確認日:2026年10月23日。監修:国分寺ハートアニマルクリニック 院長・獣医師 牛尾俊之。

  1. Merck Veterinary Manual. Principles of Toxicosis Treatment in Animals.
  2. American College of Veterinary Surgeons. Gastrointestinal Foreign Bodies.
  3. Mandell DC, et al. RECOVER Guidelines: First Aid for Dogs and Cats. Clinical Guidelines. J Vet Emerg Crit Care. 2026;36(Suppl 1):S36–S62.
  4. ASPCApro. Proper Use of Emetics in Dogs and Cats/When NOT to Use Emetics in Dogs and Cats.
  5. 農林水産省 動物医薬品検査所:クレボル(動物用医薬品等データベース)。
  6. 農林水産省 動物医薬品検査所:バソラミン注(動物用医薬品等データベース)。
  7. Orito K, et al. Safety and efficacy of intravenous administration for tranexamic acid-induced emesis in dogs with accidental ingestion of foreign substances. J Vet Med Sci. 2017.
  8. European Commission. Clevor: Summary of Product Characteristics. 2025.(成分に対する過敏症の禁忌)
  9. Merck Veterinary Manual. Hypersensitivity Diseases in Animals.

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