猫の心筋症のステージ分類|B1・B2・C・Dの違いと治療の考え方
「肥大型心筋症(HCM)と診断されたけれど、まだ元気です」「B1、B2と言われたけれど何が違うの?」というご相談があります。
猫の心筋症では、病名だけでなく現在どのステージにいるのかを評価することが、その後の検査や治療を考えるうえで重要です。ACVIMではStage A、B1、B2、C、Dに分類します。
この記事でわかること
- Stage A・B1・B2・C・Dの違い
- B1とB2で考え方が変わる理由
- 左心房が重要な理由
- ステージごとの治療・経過観察の基本
猫の心筋症のステージ分類
| ステージ | 状態 | ポイント |
|---|---|---|
| A | 素因はあるが心筋症の所見なし | 好発猫種・家族歴など |
| B1 | 心筋症あり・無症状・低リスク | 心房は正常〜軽度拡大 |
| B2 | 心筋症あり・無症状・高リスク | 中等度〜重度の心房拡大など |
| C | 現在または過去にCHFまたはATE | 症状が改善してもStage C |
| D | 治療抵抗性の心不全 | 一般的治療でCHF管理が難しい |
ACVIM feline cardiomyopathy consensus(2020)に基づく概要。実際の判定は心エコー所見や臨床症状を総合します。
Stage A|まだ心筋症は確認されていない
心筋症を発症する素因があるものの、現在は心筋症が確認されていない段階です。HCMの遺伝的素因が知られる猫種や家族歴がある猫などが該当することがあります。
Stage B1|心筋症はあるが低リスク
心エコーで心筋症が確認されても、CHFやATEなどの臨床症状がなく、心房の大きさが正常〜軽度拡大にとどまる低リスク群です。
ACVIMではB1の多くで一律の治療は推奨されず、定期的な経過観察が基本です。ただし重度の左室流出路狭窄など、個別の所見によって治療を検討する場合があります。
Stage B2|無症状でもリスクが高くなった段階
B2も見た目には元気で、まだCHFやATEを起こしていません。しかし中等度〜重度の左心房拡大などがあり、B1より将来のCHF・ATEリスクが高い段階です。
ギャロップ音、不整脈、左房機能低下、著しい左室肥大、左室収縮機能低下、spontaneous echo contrast(SEC)や心臓内血栓、局所壁運動異常などもリスク評価に影響します。
B2では血栓予防を検討することがあります
中等度〜重度の左房拡大、左房機能低下、左心耳血流速度低下、SECなどがある猫ではクロピドグレルなどの抗血栓療法を検討します。ただし、すべてのB2猫に同じ治療を行うわけではありません。
Stage C|心不全または血栓症を経験した段階
現在または過去にCHFまたはATEを起こした猫です。肺水腫・胸水による呼吸困難や、血栓による突然の後肢麻痺などが代表的です。治療で症状が改善してもStage Bへ戻るのではなく、Stage Cとして管理します。
Stage D|心不全のコントロールが難しい段階
一般的な治療を行ってもCHFのコントロールが難しくなった段階です。薬だけでなく、食欲、体重、腎機能、電解質、生活の質なども含めて治療を考えます。
なぜ「左心房」が重要なの?
猫のHCMでは左室壁が厚くなりますが、ステージを考える際は壁厚だけでは不十分です。左心室が硬くなって血液を受け入れにくくなると左心房への負担が増え、左心房が大きくなるほどCHFやATEのリスクが高くなります。
そのため心エコーでは、左室壁厚に加えて左心房の大きさ、左房機能、左心耳血流、SEC、血栓、左室流出路などを総合評価します。LA/Aoなどの数値も重要ですが、ひとつの数値だけでB1・B2を機械的に決めるものではありません。
データで見る「無症状でも経過観察が大切な理由」
REVEAL Studyでは、無症候性HCM/HOCMの猫1,008頭を追跡し、研究期間中に30.5%でCHF、ATE、またはその両方が確認されました。
累積リスクはCHFが1年7.0%、5年19.9%、10年23.9%、ATEが1年3.5%、5年9.7%、10年11.3%でした。これはB1・B2別の発症率ではなく、無症候性HCM/HOCM全体の長期データです。

よくある質問
B1なら薬を飲まなくて大丈夫?
一般的には一律の投薬ではなく、定期的な心エコーによる経過観察が基本です。ただし個別の所見によって治療を検討します。
B2になったら心不全ですか?
いいえ。B2はまだCHFやATEを起こしていない無症候性の段階です。ただしB1よりリスクが高いため、血栓予防や睡眠時呼吸数の確認などを検討します。
症状がなくても心エコーは必要?
B1からB2への変化は外見だけでは分からないことがあります。左心房や血流状態の変化を定期的に確認することが重要です。
まとめ
猫の心筋症では、HCM・RCM・DCMなどの種類だけでなく、現在のステージ評価が治療方針を考えるうえで重要です。特に無症状のStage Bでは、B1とB2を分けるうえで左心房の状態が大きなポイントになります。
国分寺・小平・小金井で猫の心筋症が気になる方へ
国分寺ハートアニマルクリニックでは、心臓超音波検査、胸部レントゲン検査、血圧測定などを組み合わせ、猫の心筋症の診断・ステージ評価・経過観察を行っています。
国分寺・小平・小金井周辺で、「心雑音を指摘された」「HCMと言われた」「B1・B2の違いを知りたい」「治療が必要か相談したい」という場合にも、お気軽にご相談ください。
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参考文献
Luis Fuentes V, et al. ACVIM consensus statement guidelines for the classification, diagnosis, and management of cardiomyopathies in cats. J Vet Intern Med. 2020;34:1062-1077.
Fox PR, et al. The REVEAL Study. J Vet Intern Med. 2018;32:930-943.


