犬の鼻水・くしゃみが続く|歯周病と口鼻瘻の検査・治療
「鼻水がなかなか治らない」「くしゃみが続く」。こうした症状では鼻の病気を考えますが、上あごの歯周病が関係していることもあります。その一つが、口の中と鼻の中がつながってしまう口鼻瘻(こうびろう)です。
ただし、鼻水が出る犬すべてに歯の病気があるわけではありません。歯と鼻の両方を調べ、原因に合った治療を選ぶことが大切です。この記事では、ご家庭で気づける変化、検査の目的、治療と術後の注意点を解説します。
口鼻瘻とは? 歯周病で鼻の症状が出る理由
口と鼻は本来、骨や粘膜によって隔てられています。歯周病が進むと歯を支える組織が壊れ、上あごの歯の周囲から鼻側へ通じる穴ができることがあります。ここを通って口の中のものが鼻に入り込むと、鼻の炎症が続く原因になります。
見た目の歯石の量だけでは、歯ぐきの下の状態は判断できません。また、以前に抜けた歯や抜歯した場所も確認が必要です。抜歯後に見つかった場合でも、もともとの歯周病による骨の欠損が関係している場合があり、経過と検査を合わせて評価します。
こんな変化が続いたら受診を
- 鼻水やくしゃみを繰り返し、よくなっても再発する
- 片側の鼻から粘り気のある鼻水や血の混じった鼻水が出る
- 食事や飲水の前後に、くしゃみや鼻の違和感が目立つ
- 鼻の症状に加え、口臭、歯ぐきの腫れ、食べ方の変化がある
診察時には「いつから」「左右どちらから」「食事との関係」「薬でどう変わったか」をお伝えください。症状が出ている動画や鼻水の写真も、診察室で再現しない変化を説明する助けになります。ご家庭で口を無理に開けたり、穴を探して器具を入れたりする必要はありません。
安静時にも呼吸が苦しそう、舌や歯ぐきが青紫色、鼻血が多い・止まらない、急にぐったりした場合は、通常の歯科予約を待たず、速やかに動物病院へ連絡してください。
ダックスフンドでは特に注意? 研究データの読み方
Sauvéらの後ろ向き研究では、全身麻酔下で口腔検査を受けたダックスフンド91頭と、年齢・体重の範囲が近い他の小型犬127頭を比較しています。歯周病に伴う口鼻瘻などが見つかった犬は、それぞれ43頭(47.3%)、27頭(21.3%)でした。

ここでいう「口鼻瘻など」には、口腔と鼻腔がつながる口鼻瘻(ONF)に加え、口腔と上顎陥凹という鼻側の空間がつながる瘻孔(OAF)も含まれます。両群とも、上あごの犬歯が最も多く関係していました。
この数字は一般のダックスフンドの約半数が発症する、という意味ではありません。歯科診療を受けた犬を調べた研究で、比較群の抽出期間も同じではありません。犬種だけで診断せず、症状と口腔検査を組み合わせることが重要です。
鼻の病気との区別と、検査の進め方
長く続く鼻水には、慢性鼻炎、異物、真菌感染、腫瘍などの原因もあります。上あごの歯の根の感染が鼻側へ広がる場合もあり、歯が原因でも必ず口鼻瘻ができているとは限りません。片側か両側か、鼻水が透明かどうかだけで原因を確定することはできません。
まずは診察で、鼻と口を一緒に確認します
鼻水の経過、呼吸状態、顔の左右差、口の中の様子を確認します。過去の抜歯歴や投薬歴、持病も治療計画に関係するため、分かる範囲でお知らせください。見えている歯だけでなく、歯がない場所も評価の対象です。
歯ぐきの下は、麻酔下の検査で評価します
歯周ポケットの深さや異常な交通の有無は、専用の器具で丁寧に確認します。歯科用レントゲンでは、歯の根や周囲の骨の状態を調べます。起きている状態の目視だけでは、こうした歯ぐきの下の病変を十分に評価できません。
麻酔を行う際は、年齢だけで判断せず、全身状態や必要な事前検査を踏まえて方針を相談します。鼻そのものの病気が疑われる場合には、CT、鼻の内視鏡、組織検査などを検討し、必要に応じて専門施設と連携します。すべての犬に同じ検査を一律に行うわけではありません。
治療は「原因の歯への対応」と「穴の閉鎖」が基本
口鼻瘻が確認された場合、原因となる歯や周囲組織の状態を評価し、保存が難しい歯の抜歯などを検討します。さらに、周囲の粘膜を利用して、口と鼻の交通を閉じる手術が必要になることがあります。穴の大きさだけでなく、位置や利用できる組織の状態も治療方法に関係します。
治療の目的は、口から鼻への刺激を減らし、歯周病に伴う感染や痛みに対応することです。一方で、麻酔、出血、術後の痛み、傷が開くこと、再手術などのリスクがあります。鼻に別の病気がある場合には、穴を閉じても鼻の症状がすべてなくなるとは限りません。
抗菌薬が必要な場合もありますが、薬だけで口と鼻の間の穴を閉じることはできません。繰り返す症状に対しては、薬の反応だけで判断せず、原因の確認を進めます。過去の手術で瘢痕がある場合などは治療が難しくなるため、専門施設への紹介を含めて方針を検討します。
術後の食事・歯みがきは、傷を守ることを優先
術後は、食事の硬さ、口のお手入れを再開する場所と時期、再診日について個別にご案内します。硬いおやつやおもちゃ、引っ張り遊びは傷に負担をかけるため、許可が出るまで控えてください。手術した場所を指や歯ブラシで触ったり、口の中を強く洗い流したりしないようにします。
食欲の低下、痛がる様子、出血、鼻水の増加などがあれば、予定の再診日を待たずご相談ください。症状が軽くなっても、傷が十分に治ったかどうかは再診で確認する必要があります。治癒後は、その子に合った歯みがきと定期的な口腔チェックで、残った歯の歯周病管理を続けます。
よくあるご質問
くしゃみだけでも歯の検査が必要ですか?
一時的なくしゃみだけで口鼻瘻を疑うとは限りません。ただし、長引く、繰り返す、鼻水や口の変化を伴う場合は、鼻と口の両方を確認する価値があります。まずは通常の診察でご相談ください。
歯石を取るだけでは治りませんか?
口鼻瘻ができている場合、歯の表面をきれいにするだけでは異常な交通を解消できません。歯ぐきの下の病変を評価し、原因への処置と閉鎖の必要性を判断します。
高齢なので、相談しても治療は難しいでしょうか?
高齢であることだけを理由に、相談を控える必要はありません。持病や生活の様子を確認し、検査・治療の利益と負担、ご家族の希望を一緒に整理します。
国分寺・小平・小金井で、犬の鼻と歯のお悩みをご相談ください
国分寺ハートアニマルクリニックでは、鼻の症状と口の状態を合わせて診察し、必要な検査をご相談します。歯科専門外来は隔週木曜日です。呼吸の異常や強い症状がある場合は、専門外来の日を待たずご連絡ください。
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参考文献
- Sauvé CP, et al. Oronasal and Oroantral Fistulas Secondary to Periodontal Disease: A Retrospective Study Comparing the Prevalence Within Dachshunds and a Control Group. J Vet Dent. 2019;36(4):236–244(オンライン公開2020年). doi:10.1177/0898756420909657
- Rice CA. Treatment Options for Oronasal Fistulae. Clinician’s Brief. January 2014.
- Kuehn NF. Rhinitis and Sinusitis in Dogs. Merck Veterinary Manual. 更新2024年9月.
医学情報・参考文献の確認日:2026年10月26日。研究結果は対象集団に基づくもので、個々の犬の診断・予後を保証するものではありません。
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