犬・猫の腎後性腎不全とは?尿の詰まり・漏れの原因と治療

腎後性の異常は、尿の通り道が詰まる、または尿が体内へ漏れることで起こります。尿が出ない場合は緊急です。水を飲ませて様子を見るのではなく、すぐに動物病院へ連絡してください。

「腎後性腎不全」と説明される状態には、尿路の閉塞や損傷が関わります。こうした原因で血中尿素窒素(BUN)やクレアチニンなどが上昇した状態は、腎後性高窒素血症(postrenal azotemia)と呼びます。犬にも猫にも起こり、閉塞が続けば腎臓自体も傷つくことがあります。[1]

まず確認したい症状

  • 何度もトイレへ行く、排尿姿勢を取るのに尿が出ない
  • 尿が数滴しか出ない、血尿がある、排尿時に鳴く
  • 落ち着かない、陰部をしきりになめる、隠れる
  • 食べない、吐く、元気がない、お腹を痛がる

尿道が詰まると、便秘のようにいきんで見えることがあります。「便が出ないだけ」と決めつけず、尿が実際に出ているか確認してください。特に雄猫の尿道閉塞には注意が必要です。一方、犬でも結石などによる閉塞は起こります。[2,3]

尿管と尿道は、別の場所です

左の腎臓尿をつくる左の尿管膀胱へ運ぶ
右の腎臓尿をつくる右の尿管膀胱へ運ぶ
膀胱左右から来た尿をためる
尿道体の外へ出す
体外へ排尿
図1:尿の通り道の模式図。尿管は腎臓と膀胱の間、尿道は膀胱から体外までの通路です。実際の位置・大きさを示す解剖図ではありません。[1,3,4]

排尿があっても、尿管の閉塞を否定できません。片側の尿管が詰まっても、反対側から尿が流れていれば排尿は続くためです。尿管の閉塞では、頻尿よりも食欲低下や嘔吐などが目立つ場合があります。片側だけの閉塞では、血液検査の腎臓の数値が大きく上がらないこともあり、画像検査が重要です。[4,5]

原因は大きく3つに分かれます

膀胱の出口側

尿道の閉塞

結石、炎症に伴う栓、傷あとによる狭窄、腫瘍などで、尿が体外へ出にくくなります。

腎臓と膀胱の間

尿管の閉塞

結石や狭窄などで、腎臓から膀胱へ尿が流れにくくなります。左右両方の評価が必要です。

尿路の損傷

尿の漏れ

交通事故などで膀胱や尿道・尿管が損傷し、尿が腹腔内や周囲の組織へ漏れる場合があります。

尿道が詰まる原因は結石だけではありません。猫では炎症に伴う物質などが栓になることもあります。また、結晶が見つかったことだけで閉塞の原因や治療法が決まるわけではありません。[2,3]

腹腔内へ尿が漏れる状態を尿腹症といいます。漏れた尿の成分が体内へ再吸収され、検査値や電解質に異常を生じます。事故後に尿が出ていても尿路損傷は否定できません。[6]

受診を急ぐ目安

尿が出ない・出たか分からない

何度もいきむのに尿が出ない、数滴しか出ず苦しそうな場合は、すぐに電話でご相談ください。尿がたまるまで待ったり、採尿できるまで受診を遅らせたりしないでください。

ぐったり・嘔吐・事故後の異常

排尿の異常に加えてぐったりしている、吐く、立てない場合や、事故後にお腹の痛み・排尿の変化がある場合も緊急です。診療時間外は診療可能な救急対応施設へ連絡してください。

尿路閉塞では、腎機能の悪化だけでなく、血液中のカリウムが増える高カリウム血症から危険な不整脈が起こることがあります。「何時間なら待てる」と家庭で判断せず、早めの連絡が必要です。[2,3]

具体的にどのような検査をしますか?

血液検査と心電図

BUN・クレアチニンに加え、カリウムなどの電解質、必要に応じて血液ガスで酸塩基の異常を調べます。脈や心拍に異常がある場合や高カリウム血症が疑われる場合には、心電図も確認します。緊急性が高いときは、検査と全身状態を安定させる治療を並行して進めます。[3,6]

超音波・レントゲンなどの画像検査

超音波検査では膀胱内の尿、結石、腎盂や尿管の拡張、腹腔内の液体などを確認します。レントゲン検査も組み合わせ、尿管・尿道のどこに問題があるかを調べます。結石の種類や位置によって見え方は異なるため、単独の検査で判断できない場合があります。尿の漏れが疑われるときは、造影検査などが必要になることもあります。[3,6]

尿検査・必要に応じた尿培養

尿比重や尿沈渣から尿の濃さ、血球・結晶などを確認します。ただし、尿比重だけでは腎後性かどうかを判定できません。感染が疑われれば尿培養を検討し、抗菌薬が必要か判断します。血尿や排尿時の痛みがあるだけで、細菌感染とは限りません。[1,2]

尿の漏れを調べる検査

腹腔内に液体がある場合は、その成分を調べます。液体中と血液中のクレアチニンなどを比較し、画像所見と合わせて尿の漏れを評価します。お腹に液体があるだけで尿腹症と決まるわけではありません。[6]

治療は、通り道と全身状態の両方に対応します

全身を支える

痛み・循環・電解質の治療

鎮痛、必要な輸液、高カリウム血症などへの対応。

状態に応じて並行して進めます
原因に対応する

閉塞の解除・漏れへの処置

尿道カテーテル、尿管の処置、損傷部の修復などを選択。

処置後も確認

尿量・腎機能・再閉塞を評価

尿が出た後も、脱水や電解質の変化を見ながら治療を調整。

図2:治療で確認する3つの要素。すべての動物が同じ順序・処置になるわけではありません。[2,3,6,7]

尿道の閉塞:尿が出る通路を確保

鎮静・麻酔や鎮痛を行い、尿道カテーテルなどで閉塞の解除を試みます。処置後もカテーテルを留置して管理し、自力での排尿を確認することがあります。結石が原因なら、その後の除去や種類に応じた治療を検討します。

メリットは尿の排出を回復させることですが、麻酔、尿道の損傷、感染、再閉塞などのリスクがあります。閉塞が解除できない場合や繰り返す場合は、手術を検討することもあります。手術をしても膀胱炎や結石が起こらなくなるとは限りません。[3,8]

尿管の閉塞:必要に応じて専門的な治療

閉塞の程度、原因、腎機能などから治療を選びます。尿管内に通路を作るステントや、腎臓から膀胱へ別の通路を設ける皮下尿管バイパス(SUB)などが選択肢です。専門設備や経験を要する治療では、対応施設との連携が必要になります。

これらは尿の流れを確保するための治療ですが、すでに失われた腎機能を必ず回復させるものではありません。感染や器具の閉塞などの合併症があり、処置後も検査や器具の管理を続ける必要があります。[4]

尿の漏れ:状態を整え、損傷に対応

循環や電解質の異常を治療しながら、尿を適切に排出する処置や損傷部の修復を検討します。必要な処置は漏れている場所と損傷の程度で異なります。再び尿が漏れる、感染するなどのリスクもあるため、処置後の確認が必要です。[6]

尿が出た後も、治療が必要な理由

閉塞が解除された後、一時的に多量の尿が出る閉塞後利尿が起こることがあります。尿から水分や電解質が失われ、脱水や低カリウム血症につながる場合があるため、尿量と検査値を確認します。[2]

反対に、尿が十分に出ない状態で輸液を増やしすぎると、体に水分がたまり、呼吸状態などを悪化させるおそれがあります。点滴は「多いほどよい」ものではなく、体重・尿量・循環・呼吸などに応じて調整します。[7]

退院後も、腎臓の数値がどこまで改善するか、再閉塞がないかを確認します。閉塞が解消しても腎臓への障害が残ることがあるため、食欲が戻っただけで通院を終えず、再診の指示に沿って経過をみましょう。[1,4]

ご家庭でできること・避けたいこと

  • 排尿を記録:回数だけでなく実際に出た量、いきみ、血尿、飲食・元気の変化も確認します。多頭飼育では、どの子の尿か分かる工夫をします。
  • お腹を押して出そうとしない:痛みや尿路損傷につながるおそれがあります。自己判断で人用の薬を使わないでください。
  • 水は無理に飲ませない:水を飲んでも閉塞そのものは解除できません。受診を遅らせないことが優先です。
  • 安定後は個別の予防:新鮮な水を用意し、食事やトイレ環境を見直します。療法食は結石の種類や持病に合わせて選びます。

退院後に再び尿が出にくくなった場合も、次の予約日まで待たずに連絡してください。処方された薬や食事を自己判断で変更せず、継続しにくいことがあればご相談ください。[2,8]

よくあるご質問

少し出ていれば、様子を見てよいですか?

数滴出るだけでは十分に排尿できているとは限りません。いきみを繰り返す、痛がるなどの様子があれば、すぐに病院へ相談してください。尿管の閉塞では排尿が続く場合もあります。

点滴や飲水だけで改善しますか?

全身状態を整える治療は重要ですが、詰まりや漏れへの対応も必要です。家庭での飲水や点滴の増量で解決しようとしないでください。

腎性の腎不全とは違うのでしょうか?

腎性は腎臓そのものの障害、腎後性は尿の通り道や尿の漏れに由来します。ただし、閉塞に腎臓の障害が加わるなど、複数の要因が重なる場合があります。

排尿の変化は、早めにご相談ください

国分寺・小平・小金井周辺で、犬・猫の排尿や腎臓の検査結果が気になる方はご相談ください。尿が出ない、ぐったりしている場合は通常の予約を待たず、まずお電話ください。必要な検査・治療と、状況に応じた連携についてご案内します。

関連情報:犬・猫の腎性腎不全/猫の腎前性・腎性・腎後性の違い/猫の尿検査結果の見方

参考文献・医学情報

医学情報確認日:2026年10月26日
監修:国分寺ハートアニマルクリニック 院長・獣医師 牛尾俊之

  1. Cornell University, eClinpath. Azotemia.
  2. Taylor S, et al. 2025 iCatCare consensus guidelines on the diagnosis and management of lower urinary tract diseases in cats. J Feline Med Surg. 2025. doi:10.1177/1098612X241309176.
  3. American College of Veterinary Surgeons. Urinary Obstruction in Dogs.
  4. American Society of Veterinary Nephrology and Urology. Pet Owner Page: Ureteral obstruction / SUB.
  5. Pulido Vega D, et al. Association of preoperative ultrasonographic parameters of the contralateral kidney with long-term serum creatinine in cats treated for unilateral ureteral obstruction. Front Vet Sci. 2025. doi:10.3389/fvets.2025.1518713.
  6. Robakiewicz P, Halfacree Z. Urinary tract trauma in cats: stabilisation, diagnosis and management. J Feline Med Surg. 2023. doi:10.1177/1098612X231159073.
  7. Pardo M, et al. 2024 AAHA Fluid Therapy Guidelines for Dogs and Cats.
  8. American College of Veterinary Surgeons. Urinary Obstruction in Male Cats.

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