犬の乳歯が抜けない|乳歯遺残の受診目安と抜歯のタイミング
「乳歯が抜けないまま、隣から新しい歯が生えてきた」「犬歯が2本並んでいる」。子犬の口元でこのような変化に気づいたら、乳歯遺残(にゅうしいざん/persistent deciduous teeth)の可能性があります。乳歯遺残とは、本来抜ける時期を過ぎても乳歯が残っている状態です。
判断のポイントは月齢だけではありません。同じ場所の永久歯が生え始めているのに乳歯が残っている場合は、早めに動物病院へご相談ください。食欲があっても、歯の位置や噛み合わせへの影響を確認する必要があります。
犬歯が2本並ぶ・歯が重なるときに確認したいこと
- 細く尖った歯のすぐ隣に、より太い歯が生えてきた
- 歯が重なり、隙間に食べ物が挟まる
- 歯肉が赤い、腫れている、口臭が気になる
- 口元を触られるのを嫌がる、噛みにくそうにする
- 下の犬歯が上あごの内側に当たり、傷ができている
ご自宅で確認する際は、嫌がらない範囲で唇をそっと持ち上げる程度にしてください。大きく口を開けたり、歯を揺らしたりする必要はありません。外見だけでは乳歯・永久歯の区別が難しいこともあります。
乳歯が抜けないときに考えられる状態
永久歯が生えても乳歯が残っている
生え変わりでは、乳歯の歯根の吸収などが進み、乳歯から永久歯へ交代します。永久歯の生える位置がずれている場合などには、乳歯がしっかり残ることがあります。永久歯の発育位置や遺伝的な要因も関わるため、飼い主様の育て方だけに原因を求めるものではありません。
歯が密集すると歯垢がたまりやすくなり、歯周組織の炎症や、永久歯の位置のずれにつながることがあります。特に犬歯の重なりは気づきやすい所見ですが、犬歯以外も含めて診察します。
乳歯はあるが、永久歯が見えない
この場合は、同じ場所の永久歯が生まれつきない先天性欠如や、永久歯が歯肉・骨の中にとどまる未萌出歯・埋伏歯などを区別します。口の中に見えないからといって「永久歯は存在しない」とは判断できません。
歯科用レントゲンで永久歯の有無と位置、乳歯の歯根や周囲の状態を確認します。永久歯がなく、乳歯自体が健康で周囲にも悪影響がない場合には、乳歯を残して定期的に診察する選択肢があります。すべての残った乳歯を一律に抜くわけではありません。
いつ受診する?月齢より歯の状態が大切です
止まらない出血、強い外傷、口が閉じられないなど、急な異常があるとき。
強い痛み、食べられない、腫れ、犬歯が上あごに当たって傷があるとき。
乳歯と永久歯が同じ場所に並んだとき。元気・食欲があっても、予定の健診まで長く待たずに相談しましょう。
この区分は連絡の目安であり、診断ではありません。症状が重なる場合や判断できない場合は、お電話で状態をお伝えください。
乳歯遺残への対応は「生後6〜8か月を過ぎてから」「1歳になってから」と一律に決めません。AAHAの歯科ガイドラインでは、永久歯が生え始める時期から乳歯の残存を確認し、必要な処置につなげることが勧められています。歯が抜けた場合の一般的な見方は、犬の歯が抜けたときの原因と受診目安もご参照ください。
診察と歯科用レントゲンで治療方針を決めます
診察では、乳歯と永久歯の本数・位置、歯肉の炎症、歯の動揺、上下の噛み合わせを確認します。歯の形や大きさだけで決めず、必要な画像検査を組み合わせます。
歯科用レントゲンは、見えない歯根や永久歯との位置関係を把握するために重要です。抜歯前の評価に加え、処置後には歯根の残存などを確認します。精密な検査・処置は通常、全身麻酔下で行います。
乳歯の抜歯で期待できることと注意点
永久歯と周囲の組織を守るための治療
抜歯の目的は、見た目を整えることだけではありません。歯の混み合いや、歯が口の粘膜を傷つける原因を取り除き、痛みのない機能的な噛み合わせを目指します。
適切な時期の抜歯によって永久歯がよりよい位置へ生える助けになる一方、すでに生じた位置のずれが必ず自然に治るとは限りません。抜歯後も永久歯の生え方と噛み合わせを確認し、必要に応じて専門的な歯科診療を検討します。
乳歯の抜歯にもリスクがあります
小さく見える乳歯でも、歯肉の下には歯根があります。処置には歯根の破折・残存、出血、周囲組織の損傷、発育中の永久歯への影響などのリスクがあります。歯の状態に応じた方法を選び、無理な力をかけず慎重に処置します。
また、全身麻酔には呼吸・循環への影響などがあるため、身体検査、既往歴、必要な術前検査を踏まえて計画します。体格や成長段階、健康状態も考慮し、鎮痛と麻酔中の監視、回復時の管理を行います。歯科処置と麻酔の一般的な流れは、犬の歯石除去・全身麻酔の解説をご覧ください。
避妊・去勢手術と同時にできますか?
同じ麻酔で処置できる場合もありますが、歯の状態と手術予定日によります。麻酔の回数をまとめる利点だけで判断せず、待つことで永久歯の位置や口の傷に影響しないかを評価します。避妊・去勢の予定が先の場合も、歯の診察は先に受けてください。
ご自宅でできること・避けたい対応
- 気づいた日、食べ方の変化、口を気にする仕草などを記録します。
- 写真は嫌がらない範囲で撮影し、診察時にお見せください。
- 乳歯を指や器具で引っ張ったり、糸をかけて抜いたりしないでください。
- 抜けやすくしようとして、骨・角・蹄など硬いものを噛ませないでください。
- 痛む場所や生え変わり中の敏感な部分を、無理に歯磨きしないでください。
食事の硬さを変えるだけで乳歯遺残を解消できるとは考えず、口の状態を調べることを優先しましょう。硬いものによる歯の損傷については、犬の歯が折れた・欠けたときの解説もご覧ください。
抜歯後は、処方された薬、食事の形状、遊びの制限、歯磨きの再開時期について個別の指示に従ってください。食べられない、出血が続く、腫れが増える場合は、次の予約日を待たずに連絡しましょう。
よくあるご質問
ぐらぐらしていれば、自然に抜けるまで待てますか?
動きの程度だけでなく、永久歯の生え方や噛み合わせも判断材料です。永久歯と並んでいる場合は、自宅で長く様子を見ず診察を受けてください。
大人の犬に乳歯が残っていても治療できますか?
成犬でも評価と治療は可能です。乳歯の健康状態、永久歯の有無、歯周病や噛み合わせを調べます。「今さら遅い」と諦めず、ご相談ください。
抜歯をしたら、歯並びの問題は終わりですか?
永久歯の萌出と顎の成長を確認するため、再診が大切です。見た目だけでなく、口を閉じたときに歯や粘膜を傷つけていないかを確かめます。
当院の歯科相談について
国分寺ハートアニマルクリニックの歯科専門外来は隔週木曜日です。乳歯と永久歯の重なりに気づいた場合は、まず通常診察でご相談いただけます。痛みや口の傷がある場合は専門外来の日まで待たず、お電話ください。
医療情報確認日:2026年10月20日
参考文献・参考資料
- Bellows J, et al. 2019 AAHA Dental Care Guidelines for Dogs and Cats. 2019. ガイドライン全文/若齢動物の歯科管理
- AAHA. Discussing regular oral healthcare. 2019. 生え変わり期の口腔診察
- Mulherin BL. Developmental Abnormalities of the Mouth and Dentition in Small Animals. Merck Veterinary Manual. 2024年更新. 乳歯遺残・未萌出歯・咬合異常
- American Veterinary Dental College. AVDC Nomenclature. 公開年記載なし、2026年10月20日閲覧. 乳歯遺残などの歯科用語
ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。
LINE友だち追加で診察予約・最新情報がチェックできます!!
国分寺、小平、小金井周辺にお住まいの飼い主様
定期的な健康チェックから心臓病、歯のお悩みまで、気になることがございましたらご相談ください。
大切なペットが元気に過ごせるよう、スタッフ一同サポートいたします。


