猫の高血圧|症状がなくても血圧測定が大切な理由

猫の高血圧は、元気や食欲があるだけでは見つけにくい病気です。血圧が高い状態が続くと、目・腎臓・心臓・脳などに負担がかかることがあります。とくにシニアの猫、腎臓病や甲状腺の病気がある猫では、症状を待たずに血圧測定を相談することが大切です。[1,3]

ただし、病院で緊張すると一時的に血圧が上がることもあります。高い数値が一度出たことだけで決めつけず、落ち着いた条件での測定と、体全体の検査結果を合わせて判断します。[1]

タオルの上で休む灰白の猫の前足に小さなカフを巻き、血圧を測定する説明用画像。「猫の高血圧」「症状がなくても、血圧の確認を」と記載。

血圧測定を表した説明用の生成画像です。当院の実際の診療・症例写真ではありません。

医学情報確認日:2026年10月14日

気づきにくい症状と体の変化

高血圧だけで分かりやすい不調が出るとは限りません。ご自宅では、見え方や歩き方、普段の行動の変化に目を向けてください。次のような様子が見られる場合があります。[3]

  • 家具や壁にぶつかる、段差を怖がるなど、見え方が変わった
  • 明るい場所でも瞳孔が大きい、目の中に出血が見える
  • ふらつき、けいれん、反応や行動の急な変化がある

飲水・尿量の増加や体重減少がある場合は、高血圧に関連する腎臓病や甲状腺の病気なども調べます。これらの症状だけで高血圧と診断することはできません。[1,3]

背景にある病気も確認します

猫では、慢性腎臓病や甲状腺機能亢進症とともに高血圧が見つかることがあります。副腎の病気などが関係する場合もあれば、検査をしても明らかな原因が見つからないこともあります。持病を治療していても血圧の確認は必要です。[3]

腎臓病の治療中であれば「腎臓の数値だけでなく、血圧も確認できていますか」とご相談ください。関連する内容は、猫の慢性腎臓病、猫の甲状腺機能亢進症の記事でも説明しています。

急な見え方の異常は、すぐに連絡を

突然物にぶつかる、見えていない様子がある、けいれんする、倒れる、呼吸が苦しそうな場合は、すぐに動物病院へ連絡してください。高血圧による障害だけでなく、ほかの緊急疾患も考えられます。LINEの返信や翌日のWEB予約を待つ状況ではありません。[1,3]

高血圧に伴う網膜の障害では、治療しても視力が戻らないことがあります。一方、症状がない猫の血圧確認は、落ち着いて受けられるよう通常診察で計画できます。気になる変化がある場合は、予約時にその内容もお伝えください。[3]

血圧は落ち着いた状態で測ります

通常は、前足やしっぽなどに小さなカフを巻いて測定します。静かな環境に慣れてから測り、複数の測定値を確認します。カフの大きさ、体の姿勢、動きや緊張も結果に影響します。検査の順番や測り方を整えることが、正しく判断するために重要です。[1]

緊張による一時的な上昇は「白衣高血圧」と呼ばれます。臓器への障害がなく結果が判断しにくいときは、別の日の再測定などを検討します。ただし、急な視覚異常などがあり、高血圧による障害が疑われる場合は、再測定のためだけに治療を先延ばしにしません。[1,2]

数値は臓器の状態と合わせて判断します

心臓が収縮したときの「上の血圧」を収縮期血圧といいます。ACVIMの2018年コンセンサス声明では、臓器障害のリスクを次のように分類しています。これは発生率ではなく、評価の目安です。[2]

猫の収縮期血圧と臓器障害リスクの目安。140mmHg未満は最小、140〜159は低い、160〜179は中程度、180以上は高い。測定条件や臓器の状態も合わせて判断する図解。

ACVIMコンセンサス声明(2018年)に基づく臓器障害リスクの分類です。発生率や治療成績のグラフではありません。数値だけでは診断せず、測定条件と全身の状態を合わせて判断します。[2]

収縮期血圧(mmHg)臓器障害のリスク
140未満最小
140〜159低い
160〜179中程度
180以上高い

この表だけで、ご自宅で診断や薬の調整をすることはできません。血圧が持続して高いか、目・腎臓・心臓などに影響があるかを評価します。血液・尿検査、眼底検査、必要に応じた心エコーなどを組み合わせます。高血圧で心臓の壁が厚くなる場合もあるため、心臓の変化の原因も整理します。[2]

治療は薬の効果と副作用を確認します

治療の目的は、数値を下げることだけでなく、臓器への障害を抑えることです。原因や併存疾患にも対応しながら、その猫に合う薬と量を選びます。治療開始後や薬を調整した後は、効果と血圧の下がりすぎを確認します。[1,2]

アムロジピン:血管を広げる薬

アムロジピン(amlodipine)は、血管を広げて血圧を下げるカルシウム拮抗薬です。日本でも猫の全身性高血圧症に対する承認製剤があります。[4]

注意点として、嘔吐、食欲低下、下痢、元気の低下、脱水などが見られることがあります。歯肉が厚くなる変化も報告されています。心臓や肝臓の状態、ほかの薬との組み合わせにも配慮が必要です。血圧と体調を確認しながら使用します。[4]

テルミサルタン:血圧や蛋白尿を考慮

テルミサルタン(telmisartan)は、血圧を上げる物質の働きを抑える薬です。日本では猫の全身性高血圧症と、慢性腎臓病に伴う尿への蛋白漏出を抑える目的で承認されています。病状によって選択や併用を検討します。[5]

嘔吐・下痢などの消化器症状、低血圧によるふらつき・虚脱などに注意します。腎機能、電解質、赤血球数などの確認も必要です。製品には濃度の違いがあるため、量や計量シリンジを自己判断で置き換えないでください。[5]

どちらの薬も、症状がないことを理由に中止したり、数値を下げようと追加したりしないでください。投薬後に強いふらつきやぐったりした様子があれば、次の受診予定を待たずに連絡しましょう。飲み忘れへの対応も、処方時の指示を確認してください。[4,5]

通院準備と自宅での観察

キャリーを日頃から部屋に置き、慣れた寝具を入れると、通院の負担を減らす助けになります。移動時にはキャリーを安定させ、必要に応じて覆いを使います。怖がりな猫は、予約時にその様子をお知らせください。[6]

  • 飲んでいる薬・サプリメントと、最後に投与した時刻を伝える
  • 食欲、飲水・排尿、体重、見え方、歩き方の変化を記録する
  • 気になる行動は、無理のない範囲で動画を残す

再診時には「飲ませたつもりでも吐き出していないか」「新しい薬が増えていないか」も確認します。投薬と観察を続けやすい方法を一緒に考えましょう。血圧の測定間隔は、病状や治療への反応に合わせて決めます。

よくあるご質問

元気で食欲があれば、血圧は測らなくてよいですか?

元気に見えても、高血圧を否定することはできません。年齢や持病、これまでの測定結果を踏まえて相談しましょう。猫の健康診断と合わせて、今の体の状態を確認することが大切です。[1]

人用の血圧計で、家でも判断できますか?

人用の機器やカフをそのまま使っても、猫の血圧を正しく評価できるとは限りません。機器だけでなく測定手順も重要です。家庭での測定を考える場合は、使用する機器と方法を獣医師に確認してください。[2]

食事だけで治せますか?

食事の調整だけで、治療が必要な高血圧を十分に管理できるとは限りません。腎臓病などの持病や食べやすさも考えて食事を選びます。自己判断で極端な制限をせず、処方薬と合わせて相談しましょう。[2]

国分寺で猫の血圧・健康管理のご相談

国分寺ハートアニマルクリニックでは、猫の体調、持病、過去の検査結果を確認し、必要な検査や継続管理をご相談いただけます。血圧測定をご希望の場合や、以前高いと言われたことがある場合は、予約時にお知らせください。検査結果やお薬の情報をお持ちいただくと、経過を確認しやすくなります。

参考文献

  1. Taylor SS, Sparkes AH, Briscoe K, et al. ISFM Consensus Guidelines on the Diagnosis and Management of Hypertension in Cats. Journal of Feline Medicine and Surgery. 2017;19:288–303.
  2. Acierno MJ, Brown S, Coleman AE, et al. ACVIM consensus statement: Guidelines for the identification, evaluation, and management of systemic hypertension in dogs and cats. Journal of Veterinary Internal Medicine. 2018;32:1803–1822.
  3. Cornell Feline Health Center. Hypertension. 更新2021年。
  4. 農林水産省 動物用医薬品等データベース:アモディップ錠1.25mg。効能・効果、使用上の注意。掲載更新2026年10月2日。
  5. 農林水産省 動物用医薬品等データベース:セミントラ10mg/mL経口液猫。効能・効果、使用上の注意。掲載更新2026年4月20日。
  6. International Cat Care. Taking your cat to the veterinary clinic: A guide for cat carers. 発行年の明記なし。

医学情報確認日・参考資料閲覧日:2026年10月14日。記事は一般的な情報です。検査・治療は猫の状態に応じて判断します。


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