猫の健康診断|元気なうちに受けたい理由・検査内容・準備

猫の健康診断は、元気に見える時期から体の変化を確かめ、今後の診療に使える記録を残す機会です。食欲がある、室内だけで暮らしているという理由だけでは、腎臓病や口の痛みなどを見分けられないことがあります。[1]

元気なうちから定期的に体の状態を確認し、年齢、持病、ご自宅での変化に合わせて健診の内容を相談しましょう。過去の検査結果も、今の状態を判断する大切な手掛かりになります。[1,2]

タオルの上に座る灰白の猫が聴診を受けている説明用画像。「猫の健康診断」「元気なうちから、定期チェック」と記載。

健診の様子を表した説明用の生成画像です。当院の実際の診療・症例写真ではありません。

見逃したくない小さな変化

「年を取ったから」と思っていた変化が、診療の手掛かりになることがあります。次の様子が以前と違わないか、日常の中で確認してみてください。[1]

  • 食べる量や好みが変わった、体重が少しずつ減っている
  • 水を飲む量や、トイレにできる尿の塊が増えた
  • 高い場所に上らない、遊ぶ時間や毛づくろいが減った
  • 口臭が気になる、食べ物を落とす、片側でかむ
  • 吐く回数、便の状態、鳴き方や寝る場所が変わった

食事量は「出した量」だけでなく「実際に食べた量」を記録すると役立ちます。多頭飼育では、誰が食べたか、どの猫の尿や便か分からない場合も、そのまま診察時にお伝えください。普段の歩き方や食べ方の動画も、診察室で見えにくい変化を共有する助けになります。

考えられる病気は一つではありません

飲水・尿量の増加や体重減少では、慢性腎臓病、糖尿病、甲状腺機能亢進症などを考えます。動きの減少には関節の痛み、食べづらさには歯や口の病気が関係することもあります。ただし、症状だけで病名を決めることはできません。[1,2]

反対に、目立つ症状がなくても診察や検査から異常が見つかる場合があります。見た目が健康な中高齢猫を調べた研究でも、身体検査、血液・尿検査などから追加の評価が必要な所見が確認されています。この結果を「健診を受ければ必ず病気が見つかる」「寿命が必ず延びる」と読み替えることはできません。[3]

健診を待たずに相談する目安

体重減少、飲水・尿量の変化、吐く回数の増加などが続く場合は、次の定期健診まで待たずにご相談ください。食べない、繰り返し吐く、元気が明らかにない場合も、当日中に病院へ連絡して受診のタイミングを確認しましょう。

何度も排尿姿勢を取るのに尿が出ない場合は、尿道閉塞の可能性があり、緊急の対応が必要です。呼吸が苦しそう、倒れている、意識がおかしい場合も、健診予約やLINEの返信を待たず、現在診察可能な動物病院へ電話してください。[6]

猫の1年は、人の約4年に相当します

猫は人よりも速いペースで年齢を重ねます。一般的な年齢換算では、2歳以降の猫の1年は、人のおよそ4年に相当するのが目安です。例えば、猫の7歳は人の約44歳、10歳は約56歳に相当するとされています。[7]

2歳以降の猫の1年は人の約4年に相当する年齢換算の図解。猫の7歳は人の約44歳、10歳は約56歳が目安。

年齢換算の目安です。成長や老化の進み方には個体差があります。元気なうちから定期的に体の状態を確認しましょう。[7]

これは年齢をイメージするための目安で、成長や老化の進み方には個体差があります。「少し前まで元気だった」と感じていても、その間に体調が変化していることがあります。症状が出てからだけでなく、元気なうちから定期的に体の状態を確認することが大切です。[1,7]

健診の時期や検査内容は、年齢、持病、これまでの検査結果、ご自宅での変化に合わせてご相談ください。通院中の猫は、主治医が決めた日程に沿って管理しましょう。

検査を組み合わせて分かること

体重・筋肉・口・心音の確認

身体検査では体重の数字だけでなく、脂肪のつき方や筋肉の減り方、口の状態、触診、心音などを確認します。「前回と体重は同じ」でも、体の中身まで同じとは限りません。血液検査が正常でも、口や関節の問題を十分に評価できたことにはなりません。[1,3]

血液検査と尿検査

血液検査では血球や、腎臓・肝臓などに関わる項目を調べます。尿検査では尿の濃さ、糖、たんぱく、細胞などを評価します。腎臓の状態も、一つの血液の数値だけで判断せず、尿の結果や脱水の有無、過去の推移と合わせて考えます。[2,3]

年齢や所見に応じて甲状腺ホルモンの検査などを追加します。一般的な血液検査にすべての項目が含まれるわけではないため、今回何を調べるのか確認しておくと、結果の意味が分かりやすくなります。[2]

血圧・画像検査

高齢猫や、腎臓病などが疑われる猫では血圧の評価も検討します。緊張が測定値に影響することがあるため、測定時の様子や、必要に応じた再測定を含めて判断します。[2,3]

心雑音などの所見があれば心エコー検査、腹部の異常が疑われれば腹部超音波検査などを検討します。聴診で異常がないことだけで、すべての心臓病を否定することもできません。画像検査は年齢や診察所見、病歴に応じて選びます。[3]

健診の利点と限界

健診には、気づいていなかった問題を見つける機会になることと、その猫の平常時の記録を残せるという利点があります。過去の結果を並べると、今回の値が基準範囲内でも、変化の方向を検討できる場合があります。[2]

一方、検査には費用や通院の負担があり、採血や保定を負担に感じる猫もいます。検査項目を増やすほどよいとは限らず、結果をどう診療に生かすかを考えて選びます。基準範囲から外れた結果も、緊張や測定条件などの影響を受けるため、それだけで病気や投薬の必要性が確定するわけではありません。[3,4]

正常な結果も「今後病気にならない」という保証ではありません。受診後に新しい症状が出た場合は、次回の健診日を待たずにお知らせください。

受診前に準備しておくこと

  • 過去の検査結果と、現在使っている薬・サプリメントの名前
  • 食事の種類と食べた量、体重、飲水・排泄などの変化
  • 気になる行動の動画や、確認したいことをまとめたメモ

食事を抜く必要があるか、水や普段の薬をどうするかは、予定する検査や持病によって異なります。予約時に確認し、自己判断で長時間の絶食や薬の中止をしないでください。尿や便の持参が必要な場合も、採り方、容器、保存方法、採取から持参までの時間を事前に確認しましょう。

通院を嫌がる猫への工夫

キャリーを普段から部屋に置き、慣れた敷物を入れて休める場所にしておくと、当日の負担を減らす準備になります。移動時はキャリーの底を支えて揺れを抑え、猫を追い回して入れることは避けましょう。[5]

強い恐怖がある猫では、事前に獣医師へ相談し、不安を和らげる薬を検討することがあります。診察しやすくなる利点がある一方、眠気やふらつきなどが起こる場合があり、腎機能などに応じた調整も必要です。他の猫や人に処方された薬を流用せず、帰宅後も転落などに注意してください。[4]

結果を日々の健康管理につなげます

結果を受け取る際は、「今回分かったこと」「追加で確かめたいこと」「次回の目安」の3点を整理しましょう。異常が見つかっても、直ちに薬を始める場合、追加検査を行う場合、経過を確認する場合があり、対応は一律ではありません。

国分寺ハートアニマルクリニックでは、身体検査、血液・尿・便検査、レントゲン検査、超音波検査などに対応しています。検査の組み合わせや費用、持参するものは、ご予約時にお問い合わせください。内容は当院の健康診断のご案内でもご確認いただけます。

よくあるご質問

完全室内飼いでも健診は必要ですか?

はい。室内で暮らしていても、加齢に伴う変化、肥満、腎臓や口の病気などの可能性はあります。屋外に出るかどうかだけで判断せず、年齢と健康状態に合う健診を相談しましょう。[1]

ワクチンの日に相談できますか?

相談の機会にできます。接種の判断と健康診断の内容は別なので、健診も希望することを予約時にお伝えください。必要な検査や事前の準備を確認しましょう。

元気なら血液検査だけで十分ですか?

血液検査は大切ですが、それだけですべてを確認できるわけではありません。身体検査や尿検査などが必要かを、年齢・病歴・ご自宅での様子と合わせて相談してください。[2,3]

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参考文献

  1. Quimby J, et al. 2021 AAHA/AAFP Feline Life Stage Guidelines. J Feline Med Surg. 2021;23:211–233.
  2. AAHA. Diagnostic Testing for Each Life Stage. 2021 AAHA/AAFP Feline Life Stage Guidelines.
  3. Paepe D, et al. Routine Health Screening: Findings in apparently healthy middle-aged and old cats. J Feline Med Surg. 2013;15:8–19.
  4. Rodan I, et al. 2022 AAFP/ISFM Cat Friendly Veterinary Interaction Guidelines: Approach and Handling Techniques. J Feline Med Surg. 2022;24:1093–1132.
  5. International Cat Care. Taking your cat to the veterinary clinic: a guide for cat carers.
  6. Cornell Feline Health Center. Feline Lower Urinary Tract Disease.
  7. Feline Veterinary Medical Association. Feline Life Stages: Cat Age to Human Age. 2025.

医学情報確認日:2026年10月14日。個々の猫の診断・検査・治療方針は、診察結果に基づいて判断します。


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