猫の尿蛋白・蛋白尿を指摘されたら|追加検査・治療と経過観察

猫の尿検査で「蛋白が出ています」と言われても、その結果だけで腎臓病や薬の必要性が決まるわけではありません。尿の濃さ、炎症や血液混入の有無、異常が続くかを確認し、必要に応じて尿蛋白/クレアチニン比(UPC)や血圧などを調べます。

この記事では、検査で尿蛋白を指摘された飼い主様に向けて、追加検査から治療・経過観察までの考え方を解説します。検査票の数字だけを見て不安になったときは、猫の普段の様子と一緒にご相談ください。

猫と尿検体容器、UPCと書かれたカード。「猫の尿蛋白を指摘されたら」の見出し
※イメージ画像です。実際の検体・当院の採尿器具を示す写真ではありません。

元気な猫でも見つかることがあります

蛋白尿(proteinuria)は、尿中の蛋白が増えている状態を指します。それ自体に分かりやすい症状があるとは限らず、健診や持病の経過観察で見つかる場合もあります。食欲があり、普段どおりに過ごしていても、繰り返し認められる場合は原因を確認することが大切です。[1]

受診時には、飲水や尿量の増加、体重の減少、食欲の変化、血尿、排尿時の痛みなどをお伝えください。ただし、これらは蛋白尿に特有の症状ではありません。尿の色や泡だけで、蛋白の量や原因を判断することもできません。

尿蛋白が増える主な原因

尿路の炎症や血液の混入

膀胱や尿道などに炎症・出血があると、その影響で尿中の蛋白が増えることがあります。採尿時の血液混入や、外陰部などからの混入にも注意が必要です。尿蛋白が陽性でも、すべてが腎臓から漏れた蛋白とは限りません。[1]

腎臓からの蛋白の漏出

腎臓には、血液をろ過する糸球体と、必要な成分を回収する尿細管があります。これらの働きに異常が起こると、尿へ出る蛋白が増えることがあります。慢性腎臓病(CKD:chronic kidney disease)の評価では、腎臓由来の蛋白尿が続いているかが重要です。[1]

高血圧や一時的な体調の影響

高血圧が蛋白尿に関係することもあります。また、発熱などの全身状態に伴う一時的な変化も考慮します。一回の結果で原因を決めず、尿検査以外の情報も合わせて判断します。[1,2]

まず相談したい受診の目安

症状がなく尿蛋白を指摘された場合は、結果を放置せず、再検査が必要か、次に何を確認するかを相談しましょう。急いで薬を始めるかどうかよりも、採尿条件や異常の持続性を整理することが先になる場合があります。

食べない、繰り返し吐く、ぐったりする場合は当日中に連絡してください。何度もいきむのに尿が出ない、倒れる、呼吸が苦しそう、急に見えていない様子がある場合は、すぐに動物病院へ連絡してください。尿蛋白の再検査予約や採尿の成功を待たず、診療時間外は対応できる救急病院へ相談しましょう。[2,7]

追加検査では何を確認しますか?

猫の尿蛋白を指摘された後に、炎症・混入、蛋白尿の持続性と程度、全身状態を確認し、治療と経過観察を決める図
UPCは尿蛋白/クレアチニン比です。数値だけで治療を決めず、原因と全身状態を合わせて評価します。

尿比重と尿沈渣

尿比重は尿の濃さの目安です。同じ「蛋白+」でも、濃い尿と薄い尿では受け止め方が変わります。試験紙は最初の手がかりですが、猫では蛋白の反応の特異性に限界があり、偽陽性などにも注意します。[3]

尿沈渣(にょうちんさ)では、尿中の赤血球や白血球などを調べます。炎症や出血がある状態では、その影響を考えずに尿蛋白の数値だけを評価しないことが大切です。感染が疑われる場合には、症状や採尿方法に応じて尿培養を検討します。[1,7]

尿蛋白/クレアチニン比(UPC)

UPC(urine protein-to-creatinine ratio)は、尿中の蛋白を尿中クレアチニンとの比で表し、尿の濃さの影響を補正して評価する検査です。試験紙の「+」と同じものではなく、蛋白尿の程度や推移を見るために用います。[1,3]

猫では、IRISの分類でUPCが0.2未満は非蛋白尿、0.2〜0.4は境界域、0.4を超えると蛋白尿に分類されます。これは尿路の炎症・出血などの影響を検討したうえで使う区分であり、単独で腎臓病を確定したり、薬の開始を自動的に決めたりする基準ではありません。[1,2]

境界域でも「気にしなくてよい」という意味ではありません。検査値の推移、ほかの異常、持病を踏まえて経過を確認します。逆に、一度高かったからといって、その値だけで今後の寿命を予測することはできません。

血液検査・血圧・必要に応じた画像検査

血液検査では、クレアチニンやSDMAなど腎機能を評価する指標、アルブミン、電解質などを状況に応じて確認します。尿蛋白と血液検査は異なる情報を示すため、片方だけで全体を判断しません。超音波検査などで腎臓や尿路の形を確認することもあります。[2]

血圧測定も大切です。高血圧がある場合はその治療を行い、血圧が落ち着いた後の蛋白尿を再評価して、追加の治療を考えることがあります。測定時の緊張にも配慮し、一つの数値を切り離して判断しません。[2]

治療は原因と全身状態に合わせます

腎臓由来の蛋白尿が続く場合

持続する腎臓由来の蛋白尿では、慢性腎臓病の状態や血圧などに応じて、食事管理や蛋白の漏出を抑える薬を検討します。まず脱水や急な体調悪化がないかを確認し、安全に治療を始められる状態か判断します。[2]

代表的な薬に、テルミサルタン(telmisartan)やベナゼプリル(benazepril)があります。テルミサルタンはアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、ベナゼプリルはアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)に分類されます。腎臓の血流や圧力の調節に関わる仕組みに作用し、尿へ漏れる蛋白を抑える目的で使われます。[2,4,5]

薬で尿蛋白が減ることは期待できますが、それを「腎臓病が治った」「必ず寿命が延びる」と同じ意味には扱いません。臨床試験で確認された尿蛋白への効果と、その猫の長期的な経過は分けて考える必要があります。[4,5]

副作用と、治療中に必要な確認

これらの薬では、血圧の下がりすぎ、腎機能に関わる血液検査値の悪化、カリウムの上昇などに注意します。脱水しているときは特に慎重な判断が必要です。[2]

国内のテルミサルタン製剤の使用上の注意には、嘔吐・下痢などの消化器症状、低血圧によるふらつき・虚脱、赤血球数の減少なども記載されています。治療開始後や処方変更後は、体調と血圧、血液検査、尿検査を確認します。[6]

薬の種類・濃度によって、計量する量や専用シリンジが異なります。以前の薬や別の容器のシリンジを自己判断で使い回さず、処方時の指示を守ってください。妊娠中の方など、取り扱う方への注意事項も確認します。[6]

食べない、嘔吐が続く、ふらつくなどの変化があれば、次の投薬をどうするかも含めて速やかに病院へ相談してください。自己判断で増量したり、別の降圧薬を追加したりしないでください。

食事は「蛋白を減らせばよい」ではありません

慢性腎臓病では、病期や栄養状態に合った療法食を検討します。ただし、極端に蛋白を制限することや、食べない状態を続けることは避けます。食べた量、体重、筋肉の状態も確認し、十分に食べられる方法を相談しましょう。[2]

家庭では何を記録すればよいですか?

  • 食欲だけでなく、実際に食べた量。
  • 体重、飲水や尿量の変化。
  • 嘔吐・下痢、ふらつき、活動性の変化。
  • 薬の名前・投与量・飲ませた時刻。
  • 採尿した時刻・方法・保管状況。

結果票と記録を一緒に持参すると、前回から何が変わったかを確認しやすくなります。再診時には「今回は薬の安全性を見るのか」「尿蛋白の変化を見るのか」など、検査の目的も確認しましょう。再検査時期は治療内容と猫の状態に合わせて決めます。

当院では、家庭での採尿にスピッツ管とシリンジをお渡ししています。採り方は猫の尿の取り方をご覧ください。採れなかった場合も、受診を先延ばしにせずご相談いただけます。

よくあるご質問

元気なら再検査は不要ですか?

元気でも、蛋白尿が続くかの確認が必要な場合があります。症状がないことと、検査の経過観察が不要であることは同じではありません。結果と持病に応じて判断します。

尿蛋白の薬はずっと必要ですか?

原因や治療への反応によって異なります。数値が改善していても薬の効果による場合があるため、ご家庭だけで中止せず、血圧・腎機能・UPCの推移をもとに相談してください。

UPCが下がれば、腎臓も良くなっていますか?

UPCの低下は大切な情報ですが、それだけで判断しません。血液検査の腎機能指標、血圧、食欲、体重なども合わせて確認します。尿蛋白が減っていても、別の指標が悪化していないかを見る必要があります。[1]

結果票をお持ちになってご相談ください

国分寺ハートアニマルクリニックでは、尿検査の結果と猫の体調を合わせて、追加検査や経過観察をご相談いただけます。国分寺・小平・小金井周辺で、猫の尿蛋白や腎臓病の管理に不安がある方は、以前の検査結果と服薬の情報をお持ちください。

検査全体の見方は猫の尿検査で何が分かる?、血圧については猫の高血圧でも解説しています。

参考文献

医学情報確認日:2026年10月21日。監修:国分寺ハートアニマルクリニック 院長・獣医師 牛尾俊之。

  1. Grauer GF. Measurement and interpretation of proteinuria and albuminuria. IRIS.
  2. Taylor S, et al. 2026 iCatCare consensus guidelines on the diagnosis and management of chronic kidney disease in cats. J Feline Med Surg. 2026. doi:10.1177/1098612X261466553.
  3. Cornell University. eClinpath: Chemical constituents.
  4. Sent U, et al. Comparison of Efficacy of Long-term Oral Treatment with Telmisartan and Benazepril in Cats with Chronic Kidney Disease. J Vet Intern Med. 2015. doi:10.1111/jvim.13639.
  5. King JN, et al. Tolerability and efficacy of benazepril in cats with chronic kidney disease. J Vet Intern Med. 2006.
  6. 農林水産省 動物医薬品検査所. 動物用医薬品等データベース:セミントラ4mg/mL経口液猫. 2025年11月6日掲載情報.
  7. Taylor S, et al. 2025 iCatCare consensus guidelines on the diagnosis and management of lower urinary tract diseases in cats. J Feline Med Surg. 2025.

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