猫の腎臓の数値が高い|腎前性・腎性・腎後性の違い

猫の血液検査で「腎臓の数値が高い」と言われても、それだけで慢性腎臓病と決まるわけではありません。腎臓への血流、腎臓自体の働き、尿の通り道を分けて調べることが大切です。

尿素窒素やクレアチニンなど、通常は腎臓から排泄される物質が血液中に増えた状態を高窒素血症(azotemia)と呼びます。その原因を整理するのが「腎前性・腎性・腎後性」という分類です。これは病気の軽い順・重い順でも、慢性腎臓病のステージでもありません。[1,2]

どのような変化に気づいたら相談する?

食欲がない、吐く、元気がない、体重が減る、水を飲む量や尿の量が変わるなどが相談のきっかけになります。一方、目立つ症状がなく、健康診断の血液検査で異常が見つかることもあります。症状だけで3つの原因を見分けることはできません。

「いつから」「食事や飲水は普段のどれくらいか」「尿の塊は増えたか、減ったか」「使っている薬やサプリメント」を整理し、過去の検査結果もお持ちください。一度の数値だけでなく、変化の経過が診断の助けになります。[2,3]

腎前性・腎性・腎後性の違い

腎前性|prerenal

腎臓へ届く血流の問題

脱水、出血、ショックなどで腎臓に十分な血液が届かず、老廃物を排泄しにくくなります。

循環状態と脱水の原因を確認

腎性|renal

腎臓自体の障害

急性腎障害や慢性腎臓病などにより、腎臓の老廃物を排泄する働きが低下します。

急性・慢性、原因、合併症を確認

腎後性|postrenal

尿の通り道や漏れの問題

尿管・尿道の閉塞や膀胱の破裂などで、尿を正常に体外へ出せなくなります。

閉塞・尿の漏出を速やかに確認

原因の位置を整理する概念図です。実際には複数が重なることがあり、この図だけで診断はできません。[1,2]

腎前性:腎臓への血流が減っている場合

嘔吐や下痢、飲水不足などに伴う脱水、出血による循環血液量の減少、ショックなどで、腎臓への血流が低下することがあります。心臓の病気が循環に影響している場合もあります。まず腎臓の外側にある問題が、検査値の上昇に関係している状態です。[1,2]

原因に合った治療で血流が回復し、腎臓自体に障害が生じていなければ、検査値が改善することがあります。ただし、血流不足が長引くと腎臓そのものが傷つくこともあります。「腎前性だから軽症」「脱水だけだから様子を見てよい」とは判断できません。[1]

治療は一律に点滴を増やすことではありません

脱水や循環血液量の不足があれば、状態に合わせて輸液を行います。必要な水分量、投与する速さ、経路は、体重・血圧・尿量・心臓の状態などから決めます。心疾患がある猫に水分を過剰に投与すると、肺水腫や胸水などで呼吸状態を悪化させるおそれがあります。ご自宅で皮下点滴を続けている場合も、検査値だけを見て自己判断で増量しないでください。[4]

腎性:腎臓自体に障害がある場合

腎性の原因には、急に腎機能が悪化する急性腎障害(AKI:acute kidney injury)と、腎臓の異常が慢性的に続く慢性腎臓病(CKD:chronic kidney disease)があります。もともと慢性腎臓病がある猫に急性の障害が加わる場合もあり、急性と慢性を完全に二分できるとは限りません。[2,5]

急性腎障害では、腎臓に有害な物質、感染、強い循環障害などを調べます。原因への対応、体液・電解質の調整、吐き気の管理、栄養管理などを組み合わせます。抗菌薬は感染が疑われる場合などに検討するもので、腎臓の数値が高い猫すべてに必要なわけではありません。[5]

慢性腎臓病では、残っている腎臓の働きを支え、食事、血圧、尿蛋白、リン、貧血などを状態に応じて管理します。「腎性=もう何もできない」ということではありません。治療の目的と見通しは、原因、経過、全身状態によって異なります。詳しくは猫の慢性腎臓病をご覧ください。[2,3]

腎後性:尿を正常に排出できない場合

腎臓で作られた尿は、尿管を通って膀胱にたまり、尿道から体外へ出ます。尿管や尿道の閉塞、尿路の損傷による尿の漏出などが、高窒素血症につながることがあります。閉塞が続けば、腎臓自体の障害も加わります。[1,2]

尿道閉塞と尿管閉塞は違います

尿道閉塞では、何度もトイレに行っていきむのに尿がほとんど出ない、痛がるなどの様子が見られます。便秘と思い込まず、すぐに動物病院へ連絡してください。[6]

尿管は腎臓と膀胱をつなぐ細い管です。片側の尿管に閉塞があっても、反対側の腎臓から尿が流れていれば、トイレでの排尿は見られる場合があります。検査値への影響も、反対側の腎臓の働きなどで変わります。「尿が出ているから、尿管の詰まりはない」とは言い切れません。食欲低下や嘔吐、腎機能の急な悪化がある場合は画像検査も重要です。[7]

治療では、電解質や循環の異常に対応しながら、閉塞の解除や尿の漏出への処置を検討します。閉塞部位によりカテーテル処置、手術や専門的な治療が必要になります。処置・麻酔のリスク、感染、再閉塞なども考慮し、必要に応じて専門施設へ紹介します。単に点滴を続けるだけで解決するとは限りません。[5–7]

受診の目安:尿と全身状態を優先します

すぐに電話で連絡

何度もいきむのに尿が出ない、排尿を確認できず苦しそう、倒れる、反応が乏しい、呼吸が苦しそうな場合。LINEの返信や翌日のWEB予約を待たず、診療時間外は診療可能な救急対応施設へご相談ください。

当日中に相談

食べない、繰り返し吐く、明らかに元気がない、尿の量が急に減った場合。腎臓病の治療中に急変したときも、次の定期診察まで待たずにご連絡ください。

無症状でも再評価の予定を確認

健康診断で数値の上昇を指摘された場合は、過去の結果と比較し、尿検査や再検査の時期を相談します。数値だけで自己判断して、放置したり治療を変更したりしないでください。

血液検査だけでは分類できません

尿・血圧・画像・経過を組み合わせます

血中尿素窒素(BUN)やクレアチニンは大切な指標ですが、BUNは食事や消化管出血など、クレアチニンは筋肉量などの影響も受けます。SDMA(対称性ジメチルアルギニン)も評価に役立ちますが、単独で原因が腎前性・腎性・腎後性のどれかを確定する検査ではありません。[1,3]

尿比重は尿を濃縮する働きの評価に役立ちますが、輸液や薬剤などの影響も踏まえます。尿が薄いという所見だけで慢性腎臓病と断定せず、血液検査、尿沈渣、必要に応じた尿培養・尿蛋白の評価、血圧、超音波検査などと組み合わせます。採尿を待つことで緊急治療を遅らせないことも大切です。[1,3,5]

慢性腎臓病のステージ判定は、その後です

IRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)の慢性腎臓病ステージ分類は、慢性腎臓病を診断したうえで用います。脱水や尿路閉塞の影響を確認せず、一度の高い数値をそのまま「慢性腎臓病ステージ4」などと決めることは適切ではありません。水分状態や病状が安定した段階で評価します。[3]

よくあるご質問

点滴後に数値が下がれば、腎臓病ではないのですか?

それだけでは否定できません。慢性腎臓病に脱水が加わっていた場合、脱水の改善で数値が下がっても、腎臓の病気は残ることがあります。安定した後の検査結果も確認します。[1,3]

腎臓の数値が高ければ、すぐに腎臓病用の療法食に替えるべきですか?

まず原因と栄養状態を確認します。食事管理が大切な場合でも、ほとんど食べられない猫に切り替えだけを優先することはできません。療法食を食べないときの対応も含めて相談してください。[3,5]

点滴で老廃物をどんどん流せばよいのですか?

必要な循環・水分状態を整えた後も大量の輸液を続けると、体内に水分が過剰にたまり、かえって負担になることがあります。特に尿量が少ない猫や心疾患がある猫では、体重、尿量、呼吸状態などを確認しながら調整します。[4,5]

数値が高くなった理由を、一緒に確認します

国分寺・小平・小金井周辺で、猫の腎臓の検査値について説明を受けたものの、何が原因なのか分からず不安な方は、検査結果と日常の様子をお聞かせください。原因の分類、急性か慢性か、治療の優先順位を整理して、ご家庭で気をつける点をご説明します。

関連情報:猫の尿検査で何が分かる?/尿が少ない・出ないときの受診目安

参考文献

医学情報確認日:2026年10月25日。監修:国分寺ハートアニマルクリニック 院長・獣医師 牛尾俊之。

  1. Cornell University, eClinpath. Azotemia.
  2. Van Vertloo L. Renal Dysfunction in Dogs and Cats. Merck Veterinary Manual. 2026年更新.
  3. International Renal Interest Society. IRIS Staging System:診断とステージ分類の考え方.
  4. 2024 AAHA Fluid Therapy Guidelines for Dogs and Cats. Section 5: Fluid Therapy in Ill Patients.
  5. International Renal Interest Society best practice consensus guidelines for the diagnosis and management of acute kidney injury in cats and dogs. The Veterinary Journal. 2024.
  6. Cornell Feline Health Center. Feline Lower Urinary Tract Disease.
  7. Merck Veterinary Manual. Obstructive Uropathy in Dogs and Cats.

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