猫の尿の取り方|家庭での採尿方法・保管・持参の注意点
猫の尿は、ご家庭でも採れる場合があります。大切なのは、清潔で乾いた道具を使い、排尿後すぐに回収し、採った時刻と方法を病院へ伝えることです。普段のトイレに合う方法を選び、猫が嫌がるときは無理をしないでください。
この記事では、システムトイレ、浅い受け皿やお玉、ラップ、砂を入れないトレーを使う方法と、採れた尿の移し方を説明します。必要な尿量や保存方法は検査によって異なるため、まず病院からの指示を確認しましょう。
何度もトイレでいきむのに尿が出ない、数滴しか出ない、痛そうに鳴く、吐く、ぐったりしている場合は、すぐに動物病院へ連絡してください。特に雄猫では尿道閉塞が問題になります。「尿が採れてから行こう」と待たないでください。[1,7]

家庭採尿の道具を示す説明用の生成画像です。実際の症例写真ではありません。当院ではスピッツ管とシリンジをお渡ししています。
どんなときに尿検査をしますか?
血尿、頻尿、トイレ以外での排尿、飲水量や尿量の増加などがある場合に、尿検査が診断の手がかりになります。症状がないときの健康診断や、腎臓病・糖尿病などの経過確認でも用います。膀胱炎、尿石、細菌感染などは似た症状を示すため、見た目だけで原因を決めることはできません。[1,7]
尿検査では、尿の濃さを示す尿比重、糖・蛋白・潜血などの反応、尿の中の細胞や結晶を調べる尿沈渣などを確認します。ただし、尿だけで病気を確定できるとは限らず、診察、血液検査、超音波検査などと組み合わせて判断します。[2,7]
採尿前に病院へ確認すること
- 今回の検査は家庭で採った尿でよいか
- 必要な尿量と、使う容器・採尿器具
- 採る時間帯や、食事・投薬に関する指定
- 採ってから持参するまでの時間と保管方法
- 尿だけの持参でよいか、猫の診察も必要か
細菌を増やして調べる尿培養検査を予定している場合などは、家庭での採尿より、病院で膀胱から直接採る方法が適することがあります。「採ればどの検査にも使える」とは限りません。[1,5]
当院でお渡しする採尿の道具
国分寺ハートアニマルクリニックでは、採尿用にスピッツ管とシリンジをお渡ししています。スピッツ管は尿を入れて持参するふた付きの容器、シリンジは尿を吸い取って移すための道具です。針は使いません。受け皿などにたまった尿をシリンジで回収し、スピッツ管へ移してください。
- 当院からお渡しするスピッツ管(ふた付きの採尿容器)
- 当院からお渡しするシリンジ(針を付けずに使用)
- 採尿方法に応じて、清潔で浅い受け皿・お玉・ラップなど
- 採尿時刻を記録するメモ・ラベル
- 容器を入れる密閉袋、必要に応じて保冷バッグ
手を洗い、容器の内側やふたの内面、シリンジの先を指で触らないようにします。洗剤や水分が残った容器は検査に影響するため、食品・薬品の空き容器を自己判断で代用するより、事前に病院へ容器をご相談ください。[2,3,5]
トイレに合わせた採尿方法
方法① システムトイレの下段で受ける
尿が上段のすのこを通り、下段のシートに落ちるタイプでは、採尿するときだけシートを外し、清潔なトレーで受ける方法があります。ただし、製品の構造や砂・チップの種類によって条件が違います。採尿に使えるか、メーカーの案内と病院の指示を確認してください。[6]
- 下段のシートやマットを取り外します。
- トレーを洗い、洗剤や消毒剤を十分にすすいで、完全に乾かします。上段の汚れや便、古い尿が混ざらないようにします。
- 下段トレーを正しく戻し、普段の場所で自然な排尿を待ちます。
- 排尿を確認したら、たまった尿をすぐにシリンジで回収し、スピッツ管に移してふたを閉めます。
- 採尿時刻を記録し、トイレを普段の状態に戻します。
下段に一晩たまっていた尿や、いつ出たか分からない尿は、検査に適さない場合があります。複数回分をためて混ぜないでください。また、「システムトイレ用」と表示されているだけで、すべての砂がすべての検査項目に影響しないとは限りません。使った製品名もお伝えください。[2,6]
方法② 排尿中に浅い受け皿で受ける
排尿中に近づいても気にしない猫では、清潔で乾いた浅い容器や採尿用のお玉などを、尿の流れる位置へそっと差し入れます。体や砂にできるだけ触れないように受け、容器へ移します。[6]
手を差し入れると排尿をやめる、逃げる、怒る場合は中止してください。しっぽを強く引く、猫を押さえつける、お腹を押して尿を出そうとすることは避けます。猫の自然な排尿を妨げないことを優先します。
方法③ ラップで砂に吸われる前に受ける
いつも尿をする位置が決まっている場合は、その位置の砂の上に清潔なラップやビニールシートを敷き、表面にたまった尿をシリンジで回収する方法があります。シートの上に吸収する砂を載せず、破れたり砂が入り込んだりしていないか確認します。ラップごと持参せず、尿をスピッツ管に移してください。[8]
清潔なビニールシートなどで尿が砂に吸われる前に受ける方法もありますが、猫が嫌がる、爪で穴が開く、砂や便が混ざることがあります。使う場合は見守り、かじる・飲み込む心配がある猫には使わないでください。排尿後は速やかに片付けます。[8]
方法④ 砂を入れない清潔なトレーで受ける
砂がなくてもトイレを使える猫では、洗って十分にすすぎ、乾かしたトイレに砂を入れず、底にたまった尿を回収する方法があります。普段と同じ場所に置き、自然に排尿できるか見守ります。砂がないと使わない猫に無理をさせず、嫌がる場合は普段の状態に戻してください。[9]
いずれの方法でも、猫が排尿しやすい環境を優先します。何度も追いかける、長時間閉じ込める、排尿するまでトイレから出さないといった対応は避けてください。
補足:尿を吸収しない専用の粒を使う方法
尿を吸収しない採尿専用の粒状素材を使い、トレーに残った尿を回収する方法もあります。一般の固まる猫砂とは異なりますが、購入しないと家庭採尿ができないわけではありません。使用する場合は製品と検査の適合性を病院へ確認し、猫が嫌がるときは別の方法を選びます。[3]
シリンジからスピッツ管へ移す手順
- 手を洗い、道具を準備します。スピッツ管は倒れないように持ち、ふたの内側や容器の内側には触れないようにします。
- シリンジの先を尿に浸します。針は付けず、トレーや受け皿にたまった尿へ先端を入れます。猫の体には差し込みません。
- 押し子をゆっくり引きます。尿を吸い上げ、勢いよく引いて飛び散らせないようにします。少量の場合は受け皿を少し傾けて、一か所に集めると吸いやすくなります。
- スピッツ管にゆっくり移します。シリンジの先を容器の口に向け、押し子をゆっくり押します。水や消毒液、別の時刻の尿を足さないでください。
- ふたを確実に閉めます。外側に尿が付いた場合は拭き取り、密閉袋に入れます。採尿した日付・時刻・方法を記録し、案内に沿って保管・持参します。
シリンジは尿を移すために使用し、持参する尿はスピッツ管へ入れてください。床に落とすなどして道具が汚れた場合は、水洗いだけでよいと自己判断せず、交換について当院へご相談ください。
採れた後の保管と持参

保存方法は検査の目的に合わせて確認してください。尿が出ない場合は採尿より受診を優先します。参考:本文の文献1〜5。
できるだけ新鮮な尿を届けます
尿は体の外に出てからも変化します。時間がたつと細菌が増える、細胞が壊れる、結晶が出現・消失するなど、検査結果が変わる可能性があります。一般的な尿検査では採尿後速やかな検査が望まれ、IDEXXは採尿後30分以内の分析、または適切な冷蔵保存を案内しています。この30分は、すべての病院への持参期限という意味ではありません。[2,4]
持参できる時間に合わせて採り、採れたらできるだけ早く病院へ届けるのが基本です。「冷蔵したから何時間でも同じ精度」とは考えず、来院まで時間が空くときは先に相談してください。
すぐに持参できない場合
一般的には、密閉した容器を袋に入れて冷蔵し、保冷して運びます。通常の検体保存では2〜8℃が用いられますが、凍らせないようにしてください。食品に触れないよう二重に包み、保冷剤が容器に直接触れて凍結しないよう布などを挟みます。病院で温度を調整して検査するため、自宅で電子レンジや熱湯で温める必要はありません。[2,5]
冷蔵によっても結晶が増えるなどの変化が起こり得ます。結晶を詳しく評価する目的では、新鮮な尿での再検査や院内採尿を相談します。「冷蔵後に結晶があった=膀胱内に同じ結晶があった」とは単純に判断できません。[2]
容器とメモに記載すること
- 飼い主様のお名前・猫のお名前
- 採尿した日付と時刻
- 採尿方法と、使用した砂・器具の名前
- 冷蔵を始めた時刻などの保管状況
- 血尿・頻尿などの症状、食事や薬についての情報
多頭飼育では、どの猫の尿か確認できたものを持参します。分からない場合に推測で名前を付けないでください。尿の色や排尿姿勢の動画も参考になりますが、写真だけでは尿検査の代わりになりません。
避けたい採尿方法
- ペットシートや固まった砂を絞る:吸収材などの影響があるため、通常の液体尿と同じ扱いはできません。
- 床の尿を拭いたティッシュを持参する:床の汚れ、洗剤、紙の成分などが混ざる可能性があります。
- 少ない尿に水を足す:尿が薄まり、評価できなくなります。
- 別の時刻や別の猫の尿を混ぜる:いつ・誰の尿か分からなくなります。
- 自己判断で薬品や保存剤を加える:検査項目によって結果に影響します。
- 採尿のために水を制限する・お腹を押す:安全な家庭採尿の方法ではありません。
家庭用スポンジやティッシュに吸わせた尿ではなく、液体のまま回収した尿をスピッツ管に入れてお持ちください。砂や便が混ざった場合は、そのこともお伝えください。[2,5]
家庭採尿の利点と限界
家庭採尿は、慣れた環境で自然に出た尿を集められる方法です。一方、トイレ、外陰部、被毛などに由来する細菌や汚れが混ざる可能性があります。家庭尿で細菌が見えた場合でも、それだけで膀胱内の感染とは断定できません。[1,2]
細菌感染の確認などでは、病院で膀胱穿刺による採尿(cystocentesis)を検討します。お腹から細い針で膀胱内の尿を採る方法で、外からの混入を減らせる利点があります。一方、穿刺に伴う出血や尿への血液混入などに配慮が必要で、膀胱の尿量、猫の状態、検査目的に応じて判断します。ご家庭で行う処置ではありません。[1,2]
尿道に管を入れるカテーテル採尿にも、刺激や損傷、細菌の混入などの注意点があります。「採れないから必ずカテーテルを入れる」というわけではなく、必要性を個別に判断します。[1]
うまく採れないときの対応
失敗しても問題ありません。採尿できなかったこと、普段のトイレの種類、試した方法をお伝えください。尿のたまり具合によっては院内で採尿できる場合があります。来院前に排尿させないよう長時間我慢させることはせず、必要な準備は病院へ確認してください。
多頭飼育では、対象の猫を慣れた部屋で短時間見守る方法もあります。ただし隔離で強く不安になる猫では無理をせず、普段の生活環境に配慮して方法を選びます。[3]
よくあるご質問
尿は何mL必要ですか?
必要量は検査項目や機器によって異なります。病院指定の容器の目盛りや案内を優先してください。少量でも使える検査があるため、採れた分を捨てたり、水で増やしたりせず相談しましょう。量をそろえるために受診を遅らせないでください。
必ず朝一番の尿ですか?
検査目的によります。時間帯をそろえて比較する場合などは指示がありますが、朝一番でないとすべての検査ができないわけではありません。古い朝の尿を長く保管するより、来院時間と検査目的に合わせて相談してください。
前日の尿でも使えますか?
保存条件と検査内容によって判断が変わります。自己判断で「翌日まで大丈夫」とせず、採った時刻と保管方法を伝えて確認してください。新しく採り直す場合や、院内採尿を提案する場合があります。[2,4]
血の混じった尿も持参しますか?
薄めず、そのまま持参し、症状と採尿方法をお伝えください。ただし、何度もいきむのに尿が出ない、強い痛み、嘔吐や元気低下がある場合は、採尿を続けるより先に連絡してください。[7]
当院へのご相談
国分寺ハートアニマルクリニックでは、検査の目的と猫の状態に合わせて採尿方法をご相談いただけます。国分寺・小平・小金井周辺で尿検査をご検討の方は、普段のトイレの種類や症状をお知らせください。容器、必要量、持参する時間については事前にお問い合わせください。
関連記事:猫の血尿・頻尿/猫のおしっこが少ないとき/猫の慢性腎臓病
参考文献
参照・医学情報確認日:2026年10月19日。
- Taylor S, et al. 2025 iCatCare consensus guidelines on the diagnosis and management of lower urinary tract diseases in cats. J Feline Med Surg. 2025. doi:10.1177/1098612X241309176.
- Reppas G, Foster SF. Practical urinalysis in the cat: 1: Urine macroscopic examination ‘tips and traps’. J Feline Med Surg. 2016. doi:10.1177/1098612X16631228.
- International Cat Care. Lower urinary tract diseases: a guide for caregivers. 2025.
- IDEXX. Answers to common questions about SediVue. 検体取扱いの案内.
- Cornell University Animal Health Diagnostic Center. How to Submit a Urine Specimen for Culture.
- ニャンとも清潔トイレ. 猫専門獣医師に教わる!カンタン採尿と尿検査. 家庭採尿の実践資料.
- Cornell Feline Health Center. Feline Lower Urinary Tract Disease.
- 北光犬猫病院. オシッコの取り方. 2021. 家庭採尿の実践資料.
- 三鷹アニウェル動物病院. おうちで出来る!犬・猫の採尿方法について. 家庭採尿の実践資料.
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